「うちの業務ソフトは古いWindowsでしか動かない。でもサポートは切れていると聞いた。このまま使い続けて大丈夫なのか」。情シス兼任の担当者の方から、よく聞かれる悩みです。
「古い業務ソフトを動かすために古いWindowsを残している。サポートが切れたパソコンの安全はどう守ればいいのか」
先に結論をお伝えします。サポートが切れたWindowsを「何もせずに」使い続けるのは避けるべきですが、今日すぐ全部を入れ替える必要もありません。まず「そのパソコンをネットワークから切り離せるか」を考え、切り離せない場合は有料の延長サポートや入れ替えの計画を立てる、という順番で判断すると、慌てずに済みます。
この記事では、発注者・利用者の立場で、開発会社や社内に確認すべきことを、チェックリストと質問例とあわせて整理します。※本記事は2026年11月2日時点の公開情報に基づく一般的な解説です。個別の環境の判断は、開発会社や専門家にご確認ください。
なぜ「古いWindowsを残す」ことになるのか
古い業務ソフトが古いWindowsに縛られるのは、珍しいことではありません。
- ソフトが特定のWindowsのバージョンを前提に作られており、新しいWindowsで動作確認がされていない
- 開発した会社がすでにサービスを終了している、または改修の費用が大きい
- 機器(検査装置や専用プリンターなど)と接続するためのドライバー(=機器を動かすための部品となるソフト)が新しいWindowsに対応していない
つまり、「放置している」のではなく「動かし続けるための事情がある」ケースがほとんどです。担当者が責められる話でも、開発会社が悪い話でもありません。ただし、サポートが切れたことによるリスクは現実にあるため、事情を踏まえて対策を選ぶ必要があります。
サポートが切れると何が起きるのか
Microsoftの公式ドキュメントによると、Windows 10は2025年10月14日にサポートが終了しました。この日以降、サポートが終了したバージョンには、テクニカルサポート、新機能、そしてセキュリティと信頼性の修正を含む品質更新プログラムが提供されなくなります。
📰 出典:Microsoft Learn「Windows 10の拡張セキュリティ Updates (ESU) プログラム」
同じ文書には、サポート終了後もパソコンは引き続き動作する、とも書かれています。つまり「ある日突然動かなくなる」わけではありません。問題は、新しく見つかった弱点(脆弱性=プログラムの欠陥のうち、悪用されうるもの)が見つかっても、修正が配られなくなることです。時間がたつほど、攻撃に使える弱点が増えていきます。
古いWindowsを抱える会社の5つの考え方
1. まず「何台・どの業務で・どこにつながっているか」を把握する
対策の前に、現状を一覧にします。台数、Windowsのバージョン、動いている業務ソフト、インターネットや社内ネットワークへの接続の有無です。実は「使っていないパソコン」や「メールを見るだけのパソコン」が混ざっていて、入れ替え対象が想定より少ないこともあります。
2. ネットワークから切り離せるか検討する
業務ソフトが単体で動く(インターネットや他のパソコンとつなぐ必要がない)なら、そのパソコンをネットワークから切り離す(=インターネットに接続しない)のが、最も効果的で費用も抑えられる対策のひとつです。ただし、データの受け渡しにUSBメモリーを使う場合、そこからウイルスが入る道が残ります。USBの利用ルールとウイルス対策ソフトの運用は別に決めておきましょう。
3. 切り離せないなら、延長サポート(ESU)を検討する
Windows 10については、有料で重要なセキュリティ更新プログラムを受け取れる「拡張セキュリティ更新プログラム(ESU=Extended Security Updates)」があります。Microsoft Learnでは、企業向けは年単位の購入で、サポート終了から最大3年間更新を受け取れるとされています。また、同じページには、1年目はデバイス1台あたり61米ドルで、その価格が年ごとに2倍になると記載されています(執筆時点。最新の条件・金額は必ず公式ページと販売元で確認してください)。
ここで大切なのは、ESUは「時間を買う」ものだという点です。ESUには新機能は含まれず、Windows 10のESUはバージョン22H2が前提です。また、Windows 10より前のバージョンのWindowsについては、この制度の対象かどうかを個別に確認する必要があります。永久に使い続けるための仕組みではないので、同時に入れ替えの計画も進めます。
4. 入れ替えは「業務ソフトの作り直し」だけが答えではない
入れ替えの選択肢は、大きく次のように分けられます。
| 選択肢 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 業務ソフトを新しいWindows向けに改修する | ソースコード(=プログラムの元の文章)が残っており、開発会社が対応できる | 動作確認の費用がかかる |
| 同じ機能のパッケージ製品やクラウドサービスに乗り換える | 業務が一般的で、標準の機能で足りる | データ移行と、現場の操作の変更が必要 |
| 仮想環境(=1台のパソコンの中に別のパソコンを動かす仕組み)で古いソフトを動かす | 改修が難しく、当面の延命が必要 | 仮想環境の中のWindowsも、サポートが切れている事実は変わらない |
| 作り直す | 業務自体を見直したい | 費用と期間が最も大きい |
どれが正解かは業務次第です。費用だけでなく、「その業務が止まったら何が困るか」で優先順位を付けましょう。
5. 入れ替えまでの間、リスクを下げる運用を決める
延命する期間の対策として、次のような基本を確認します。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、中小企業が取り組むべき対策をまとめた公的な資料で、2026年9月30日時点で第4.0版が公開されています。こうした資料を、社内の方針づくりの土台にできます。
📰 出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」
- 古いパソコンでは、インターネットの閲覧やメールの受信をしない
- ウイルス対策ソフトを最新の状態に保つ(対応しているものがあるか確認する)
- 使う人を限定し、管理者権限(=設定を変えられる強い権限)を持つ人を減らす
- 業務データのバックアップを、古いパソコンとは別の場所に定期的に取る
- 万が一のとき、誰に連絡し、どの業務をどう止めるかを決めておく
やりがちな失敗
- 「動いているから大丈夫」と台帳に載せないまま放置する:把握していない機器は、守ることも入れ替えることもできません。
- ESUを買って安心し、入れ替えの計画を立てない:延長期間は有限で、価格も年ごとに上がります。
- 仮想環境に入れれば安全になると思い込む:仮想環境の中のWindowsも、サポートが切れている事実は変わりません。
- 入れ替えの見積もりを1社だけで判断する:業務ソフトの改修、乗り換え、作り直しでは費用が大きく変わります。比較して判断しましょう。
発注者がやること チェックリスト
- ☐ サポートが切れたWindowsを使っているパソコンを、台数・用途・接続先まで一覧にした
- ☐ そのパソコンがインターネットや社内ネットワークに必要か、業務ごとに確認した
- ☐ ネットワークから切り離せるパソコンは切り離し、USBメモリーの使い方のルールを決めた
- ☐ 切り離せないパソコンは、ESUの対象かどうかと費用を確認した
- ☐ 業務ソフトの改修・乗り換え・作り直しの費用感を、複数の選択肢で聞いた
- ☐ 入れ替えの時期と、それまでの間の運用ルール(バックアップ・連絡体制)を文書にした
開発会社への質問例
- 「この業務ソフトは、現在サポートされているWindowsで動作確認できますか。できない場合、何が原因で、直すにはどの程度の作業が必要ですか」
- 「改修する場合と、別の製品に乗り換える場合で、費用と期間の目安をそれぞれ教えてください」
- 「入れ替えまでの間、このパソコンの安全を高めるために、設定やネットワーク構成でできることはありますか」
- 「このソフトの保守は今後も続きますか。終了の予定がある場合は、いつ頃になりますか」
- 「データを新しい環境に移すとき、どの形式で取り出せますか。移行の作業は誰が担当しますか」
まとめ
サポートが切れたWindowsは、放置すると新しい弱点を直せないという問題を抱えますが、「すぐ全部を入れ替える」か「何もしない」かの二択ではありません。
- 現状を一覧にして把握する
- 切り離せるものは切り離す
- 切り離せないものはESUで時間を買う
- その間に入れ替えの方法を選ぶ
- 入れ替えまでの運用ルールを決める
この順番で進めれば、費用と安全のバランスを取りながら進められます。「どの選択肢が自社に合うか分からない」という場合は、開発会社と一緒に、業務への影響が大きい順に整理するところから始めてみてください。
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