開発会社から「今回はTypeScriptで作ります」「Pythonがおすすめです」と提案されて、「それは人気だからなのか、うちに合うからなのか」が分からず、判断に迷った発注者の方もいるのではないでしょうか。
GitHubは2026年10月28日、年次レポート「Octoverse 2026」を公開しました。開発者がどの言語を使っているかを集計した内容で、TypeScriptが2年連続で1位、Pythonが2位、JavaScriptが3位でした。Publickeyも2026年11月5日に紹介しています。
「開発会社に『人気の言語なので安心です』と言われたけれど、それだけで決めて大丈夫?うちの案件に合うかどうかは、どう聞けばいいの?」
先に結論をお伝えします。稼働中のシステムの言語を、このニュースを理由に変える必要はありません。新しく発注するときは、「人気だから」だけで決めず、「保守する人を確保しやすいか」「自社の用途に合うか」を開発会社に確認するのが現実的です。
この記事は、執筆時点(2026年11月)の公式レポートと報道にもとづき、ニュースの要点と、発注者にとって変わること・変わらないこと、開発会社への質問例をまとめたものです。技術の仕組みの深掘りはせず、発注・運用・リスクへの影響に絞ります。
Octoverse 2026とは?ニュースの要点
Octoverse(オクトバース)は、GitHub(=プログラムの保管・共有サービス)が毎年公開している利用状況のレポートです。GitHub上の公開・非公開のリポジトリ(=プログラムの保管場所)の活動を集計しています。公式ブログと報道から、事実として確認できた点は次のとおりです。
| 項目 | 内容(執筆時点・2025年10月から2026年9月までの集計) |
|---|---|
| 開発者数 | 2億2,500万人以上。日本は約715万人で、国別では5位 |
| 言語の順位(月ごとの貢献者数) | 1位 TypeScript、2位 Python、3位 JavaScript。TypeScriptはどの指標でもPythonの上 |
| 伸び率が最も大きい言語 | Rust。主要な言語の中でおよそ倍増 |
| 活動量 | コミット(=変更の記録)は343億件で、前年の129億件から増加。マージ済みのプルリクエスト(=変更をレビューに出して取り込む単位)は13億件 |
| AIエージェント | 2026年9月時点で、プルリクエストの40%超が「AIエージェントの最初の下書き」から始まった(3月は17%) |
📰 出典:GitHub Blog「Octoverse: Commits, pushes reach new highs in 2026 as developers build with agents」
📰 出典:Publickey「GitHub Octoverse 2026」の紹介記事(2026-11-05)
レポートは、2026年に作られたリポジトリのうち、AIエージェントの利用の形跡があるものではTypeScriptが主な言語になる割合が35%で、形跡のないもの(24%)より高かったと報告しています。レポート自身も「言語の指定がないとき、エージェントがTypeScriptを選びやすい可能性がある」という趣旨の見方を示しており、原因が確定した話ではありません。
発注者にとって何が変わるか・変わらないか
ここからは、事実と区別して、筆者の見解です。
変わりそうなこと
- 開発会社の提案に、TypeScriptやPythonが増える可能性がある。 人気の言語は、開発者の数も情報も多く、開発会社にとって人を集めやすい面があります。
- 「人気だから」を理由にした提案を、見分ける必要が出てくる。 人気は判断材料の1つですが、案件に合うかどうかとは別の話です。
- AIツールとの相性が、言語選びの理由に加わり始めている。 AIコーディングツールが書きやすい言語を選ぶ、という考え方です。ただし、これは一部の傾向の話で、どの案件にも当てはまるとは限りません。
変わらないこと
- 言語は、案件の目的・既存の資産・保守する人の確保で決まること。 業務システムの多くを占めるJavaやPHPなどが、すぐに使えなくなるわけではありません。
- 稼働中のシステムを、言語の人気だけで作り直す理由にはならないこと。 作り直しには費用と移行のリスクがあります。
- 言語の人気と、品質や費用が下がることは別の話であること。 「人気の言語だから安く早く作れる」と断定できる根拠はありません。
今やるべきことと、様子見でいいこと
| やること | 様子見でよいこと |
|---|---|
| 新規の発注なら、言語を選んだ理由を開発会社に聞く | 稼働中のシステムの言語を変えるかどうかの検討 |
| 将来の保守を担える会社・人が確保しやすいか聞く | 順位の細かい上下や、将来予測の数字 |
| AIツールを使った開発を想定しているか聞く | 「AIが選ぶ言語」に合わせて仕様を変えること |
発注者が確認したい5つのこと
1. なぜその言語を提案するのか
「人気だから」だけでなく、案件の目的に合う理由を聞きます。たとえば、画面の動きが多いWebサービスなのか、データを扱う処理が中心なのかで、向く言語は変わります。理由を説明できるかどうかも、判断の材料になります。
2. 保守を引き継げる人が確保しやすいか
契約が終わったあと、別の会社に保守を頼むことも考えられます。その言語を扱える会社や人が市場に十分いるかを聞いておくと、引き継ぎで困りにくくなります。人気の言語は、この点で有利になりやすい傾向があります。
3. 既存のシステムや社内の資産と合うか
すでに動いているシステムとつなぐ場合、既存の言語やデータの形に合わせたほうが安く済むことがあります。新しい言語を足す場合は、その分の保守の担当と費用が増えないかも確認します。
4. AIツールを使った開発をどう想定しているか
開発会社がAIコーディングツールを使う場合、言語によってAIの書くコードの質や量が変わることがあります。AIが書いた部分を誰がどう確認するのかも合わせて聞きます。AIの出力は、人が確認する前提です。
5. 将来の変更に備えて、設計書やテストが残るか
言語が何であっても、設計書とテスト(=動作を確かめる仕組み)が納品に含まれていれば、あとから別の会社が引き継ぎやすくなります。言語の人気より、こちらのほうが効くことも多いです。
やりがちな失敗
- 「1位の言語だから間違いない」と決めつける。 順位は貢献者数の集計で、案件への向き不向きを示すものではありません。
- 稼働中のシステムを、流行を理由に作り直そうとする。 費用・期間・移行のリスクを、先に見積もる必要があります。
- 開発会社の得意な言語を、理由を聞かずに受け入れる。 得意であること自体は悪いことではありません。そのうえで、将来の保守や引き継ぎの話もしておくと安心です。
発注者がやること チェックリスト
- ☐ 提案された言語と、その理由を開発会社に確認した
- ☐ 保守を引き継げる会社・人が市場にいるかを確認した
- ☐ 既存のシステムとの相性と、追加の保守の費用を確認した
- ☐ AIツールを使う場合の、確認の担当と進め方を聞いた
- ☐ 設計書とテストが納品に含まれることを確認した
- ☐ 稼働中のシステムを、このニュースだけで変えないと社内で共有した
開発会社への質問例
- 「今回の案件で、この言語を選んだ理由を教えてください。人気以外の理由はありますか。」
- 「契約が終わったあと、別の会社が保守を引き継ぐ場合、この言語で困ることはありますか。」
- 「既存のシステムとつなぐ部分で、言語を合わせる必要はありますか。追加の費用は出ますか。」
- 「AIコーディングツールを使う場合、AIが書いた部分は誰がどのように確認しますか。」
- 「設計書とテストは、納品物に含まれますか。」
まとめ
- GitHubのOctoverse 2026では、TypeScriptが2年連続で1位、Pythonが2位、JavaScriptが3位でした(執筆時点)。
- 稼働中のシステムに急ぎの対応は不要です。新規の発注では、言語を選んだ理由・保守の引き継ぎ・既存資産との相性・AIツールの使い方の4つを確認しましょう。
- 順位や数字は毎年変わります。最新の内容は、GitHubの公式レポートで確認してください。
AI開発ツールの新機能については、別の記事で費用と情報の扱いの観点から整理しています。


法律や契約に関わる判断は、一般的な考え方の紹介にとどまります。個別の契約は、弁護士などの専門家や公式の窓口に確認してください。
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