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    委託先のミスで個人情報が漏れたら、誰がいつお客様に連絡する?開発会社と先に決めておく連絡の流れ

    システムの開発や運用を外部の会社に任せていると、「委託先のミスで個人情報が漏れた」という連絡が、ある日突然入ってくることがあります。そのとき一番困るのは、技術的な復旧よりも「お客様や取引先に、誰が、いつ、何を伝えるのか」が決まっていないことです。

    「委託先のミスで個人情報が漏れた時、取引先やお客様に誰がいつ連絡するのか決まっていない…」

    先に結論をお伝えします。委託先で漏えいが起きても、お客様への説明や国への報告は「任せた側(委託元)」の責任として残る、と考えて準備するのが安全です。そして、連絡の担当・期限・窓口は、事故が起きてからではなく、契約や運用ルールの段階で開発会社と決めておくことができます。

    この記事では、個人情報保護法の報告・通知の基本的な考え方(一般論)と、委託先と事前に決めておきたい連絡の流れ、そのまま使えるチェックリストと質問例を解説します。個別の事案の判断は、弁護士や個人情報保護委員会などの公式窓口に確認してください。

    目次

    委託先で漏えいが起きたとき、連絡が止まりやすい3つの理由

    理由1:「うちのミスではない」ので、自社に義務があると思っていない

    個人情報の取り扱いを外部に任せる場合、個人情報保護法では、任せた側にも委託先を監督する責任があります。漏えいが起きたとき、報告や本人への通知についても、委託元が当事者になりうる点を、多くの方が見落としています。

    理由2:連絡の窓口と期限が、契約書のどこにも書かれていない

    開発会社との契約書や保守契約書に、セキュリティ事故が起きたときの連絡先・連絡期限が書かれていないケースは珍しくありません。「事故があったら報告する」とだけ書かれていて、いつまでに・誰に・何を伝えるかが空白のままだと、初動が遅れます。

    理由3:事実が分からないうちは、誰も動けない

    漏えいの原因や範囲が調べ終わるまで連絡できない、と考えてしまうのも典型的な遅れの原因です。法令上の報告にも、分かっている範囲で先に出す「速報」と、詳細を後から出す「確報」の2段階があります。

    個人情報保護法の「報告」と「本人通知」の基本

    ここからは一般的な考え方の紹介です。条文や運用は改正されることがあるため、実際の対応では最新の公式情報を確認してください(執筆時点:2026年10月)。

    📰 出典:個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)

    個人情報保護法では、一定の重大な漏えい等が起きた場合に、個人情報保護委員会への報告と、本人への通知が義務とされています(法第26条。2022年4月から)。

    📰 出典:個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」

    項目一般的な考え方
    報告の対象になりやすい事態要配慮個人情報が含まれる、不正な利用で財産的な被害が出るおそれがある(カード情報など)、不正の目的による漏えい、多数(1,000人を超える)の本人に関わる、など
    国への報告(速報)事態を知ってから、おおむね3〜5日以内を目安に、分かっている範囲で報告
    国への報告(確報)原則30日以内(不正の目的によるものなどは60日以内)に、調査結果をまとめて報告
    本人への通知事態の状況に応じて速やかに、漏えいした内容・原因・二次被害のおそれなどを伝える

    対象になるかどうかは、漏れた情報の種類や人数、原因によって変わります。「この程度なら対象外だろう」と自社で決め込まず、迷ったら専門家や公式窓口に相談するのが基本です。

    委託先が起こした場合は、誰が報告・通知するのか

    委託先が個人情報取扱事業者である場合、委託先が委託元へ速やかに事態を通知すれば、委託先自身の国への報告義務は免除される、という整理が個人情報保護委員会のQ&Aなどで示されています。一方で、委託元の報告・通知の義務は、それだけでは免除されません。

    つまり、次のような流れになるのが基本です。

    1. 委託先が事態に気づき、委託元(発注者)へ速やかに連絡する
    2. 委託元が、国への報告(速報・確報)と本人への通知を、誰がどう行うかを決める
    3. 実務上は、委託先が調査結果や報告用の情報を用意し、委託元が窓口として動くことが多い

    ここで重要なのは、手順1の連絡が遅れると、手順2以降のすべてが遅れることです。委託先の連絡が遅いと、委託元が期限内に動けなくなります。

    開発会社と事前に決めておきたい5つのこと

    1. 委託先から発注者への「第一報」の期限と手段

    「異常に気づいたら、24時間以内に、電話とメールの両方で」のように、期限と手段を具体的に決めます。夜間・休日の連絡先も含めます。調査が終わっていなくても連絡する、とあらかじめ約束しておくのがポイントです。

    2. 第一報に含めてほしい情報

    分かっている範囲でよいので、次の項目を第一報のテンプレートにしておくと、国への速報や本人への通知文に使い回せます。

    • いつ、何が起きたか(発生日時・発見日時)
    • どの情報が、おおよそ何件・何人分か
    • 原因の見込み(不明なら不明で構いません)
    • すでに行った応急処置(アクセス遮断、パスワード変更など)
    • 次の報告の予定時刻

    3. 国・お客様への連絡を、誰が行うか

    国への報告と本人への通知は、通常は委託元の名義で行います。そのうえで、問い合わせ窓口の設置、お詫び文面の作成、被害状況の調査などを委託先がどこまで手伝うかを、役割分担表にしておきます。

    4. 調査・ログの保全と協力範囲

    原因を調べるにはログ(システムの操作記録)が欠かせません。ログの保存期間、発注者が確認できる範囲、調査にかかる費用を誰が負担するかを、事前に確認しておきます。

    5. 年に1回の連絡訓練

    連絡先は、担当者の異動や退職で古くなります。年に1回、「第一報の電話とメールが届くか」「窓口の担当者が出られるか」を確かめるだけでも、本番での遅れはかなり減ります。

    やりがちな失敗

    • 原因が分かるまで連絡しない:期限は事態を知った時点から進みます。分かっていることだけで先に動きます
    • 連絡先が現場の担当者個人のメールだけ:休暇や退職で届かなくなります。共有の窓口アドレスと緊急用の電話番号を決めます
    • 「委託先の責任」と決めつけて対応を任せきりにする:お客様から見れば、問い合わせ先はあなたの会社です
    • 契約書に何も書かないまま運用する:事故の際に費用負担でもめる原因になります

    なお、これは開発会社を疑うための話ではありません。開発会社側も、連絡先と期限が決まっていれば、迷わず動けます。事前に決めておくことは、双方にとって安心材料になります。委託先のセキュリティ確認や契約の考え方は、委託先が攻撃されたら自社のお客様の情報も漏れる?開発会社のセキュリティ確認と契約で決めておく6つのことも参考になります。

    発注者がやることチェックリスト

    • ☐ 開発会社との契約書や保守契約に、事故時の連絡期限・連絡先が書かれているか確認した
    • ☐ 社内の窓口担当者と、その代理(休暇時)を決めた
    • ☐ 夜間・休日の連絡先(電話)を、お互いに交換した
    • ☐ 第一報に含めてほしい項目をテンプレートにして共有した
    • ☐ 国への報告・本人通知の担当と、委託先が手伝う範囲を決めた
    • ☐ ログの保存期間と、調査協力の費用負担について確認した
    • ☐ 経営層への報告ルート(誰に、何分以内に)を決めた
    • ☐ 年に1回、連絡が届くかの確認を行う予定を入れた

    開発会社への質問例

    そのまま打ち合わせで使える質問です。

    • 「システムで情報漏えいの疑いが見つかったとき、御社から私たちへ、最初の連絡は何時間以内にいただけますか?」
    • 「第一報の時点で、どのような情報を教えていただけますか?ひな形はありますか?」
    • 「夜間や休日の連絡窓口はありますか?担当者が不在のときの代理の方は決まっていますか?」
    • 「ログはどのくらいの期間保存されていますか?事故の調査のとき、私たちも内容を確認できますか?」
    • 「お客様への通知や問い合わせ対応が必要になった場合、御社はどこまで協力していただけますか?費用の扱いはどうなりますか?」

    まとめ:連絡の流れは「事故の前」に決める

    委託先のミスで個人情報が漏れた場合でも、国への報告やお客様への説明は、委託元が当事者になりうるというのが基本的な考え方です。大切なポイントを振り返ります。

    • 委託先から委託元への第一報の遅れが、すべての遅れの起点になる
    • 国への報告は速報(おおむね3〜5日)と確報(原則30日、場合により60日)の2段階
    • 第一報の期限・項目・連絡先・役割分担は、契約と運用ルールで事前に決められる
    • 対象かどうかの判断に迷ったら、専門家や個人情報保護委員会などの公式窓口に相談する

    まずは現在の契約書で「事故時の連絡」の項目を探し、書かれていなければ、開発会社に上の質問例をそのまま聞いてみてください。

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      この記事を書いた人

      株式会社THIRD HERO代表取締役 朝野貴朗
      Webシステム開発を中心に、toC向けサービスサイトの運営、ツール開発などを行ってまいりました。

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