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    AIで作ったアプリは直す?作り直す?費用で迷ったときの5つの判断軸と、開発会社に出す診断の依頼

    社員がAIツールで作った業務アプリを「本格的に使いたい」「機能を足したい」と開発会社に相談したところ、「直すより作り直したほうがいい」と言われた。あるいは逆に「このまま直せます」と言われたものの、どちらが本当に安いのか判断できない。AIで作ったアプリが社内に増えてきた今、こうした相談が増えています。

    「AIツールで作ったアプリを直すのと作り直すのと、どちらが安いのか判断できない…」

    先に結論をお伝えします。「直す」か「作り直す」かは、見積もりを比べる前に決めるものではありません。 まず小さな診断(=中身を調べて、直しやすさを確かめる作業)を依頼し、その結果をもとに「そのまま直す」「一部だけ作り直す」「全面的に作り直す」の3択から選ぶのが安全です。AIで作ったかどうかより、使う人・扱うデータ・今後の寿命の3つが判断を左右します。

    この記事では、判断の5つの軸、診断で開発会社に確認してもらうこと、そのまま使えるチェックリストと質問例を解説します(内容は執筆時点・2026年10月のものです)。

    目次

    「直す」と「作り直す」で費用が逆転しやすい3つの理由

    まず、なぜ判断が難しいのかを整理します。AIで作ったアプリには、人が時間をかけて設計した業務システムとは違う特徴があります。

    理由1:動くところまでは速いが、中身の設計書が残っていない

    AIツールは、指示を出すと短時間で「動くもの」を作れます。一方で、なぜその作りにしたのかを書いた設計書や、後から直す人のための説明は、依頼しない限り残りません。開発会社が直すときは、まずコードを読み解くところから始めることになり、その調査の時間が見積もりに乗ります。

    理由2:AIは「新しく作る」ほど「既存を直す」のが得意とは限らない

    AIは新しいコードを書く作業は得意でも、既存の複雑な仕組みを理解して直す作業は苦手な傾向がある、という評価結果が出ています。Googleが2026年9月に公開したAIの開発能力の評価(Android Bench 2.0)でも、既存コードの改修や移行は新規作成より苦手とされています。詳しくは次の記事で解説しました。

    📰 出典:当ブログ「AIで開発費は下がる?Googleの新ベンチマークで見えた『改修・移行は苦手』と発注者の見積もりの考え方」

    つまり、AIで作ったアプリを「AIでサッと直せば安い」とは限りません。直すか作り直すかは、案件ごとに調べて決める必要があります。

    理由3:安全面の手直しが必要になることがある

    セキュリティ企業のVeracodeは、100以上の大規模言語モデル(=文章やコードを生成するAI)に80種類のコーディング課題を解かせ、約45%のケースでセキュリティ上の弱点を含むコードが出力されたと2025年7月に公表しています。これは特定条件での検証結果であり、すべてのAIツールや現在の最新モデルにそのまま当てはまるわけではありません。

    📰 出典:Veracode「AI-Generated Code Poses Major Security Risks in Nearly Half of All Development Tasks, Veracode Research Reveals」(2025年7月30日)

    ただ、人が書いたコードでも弱点は生まれます。大切なのは、社外に公開したり個人情報を扱ったりする前に、一度は人の目で点検することです。この点検の費用も、「直す」場合と「作り直す」場合の比較に入れる必要があります。

    直すか作り直すかを決める5つの判断軸

    開発会社の診断を待つ間に、発注者側で整理できる軸が5つあります。

    判断軸「直す」に傾く状況「作り直す」に傾く状況
    1. 使う人数人〜部署内で使う全社や社外の顧客が使う
    2. 扱うデータ公開されてよい情報が中心個人情報・取引情報・機密を扱う
    3. 今後の寿命数か月〜1年程度の試作・つなぎ数年使い続ける業務の土台にする
    4. 追加したい機能小さな修正・画面の調整ログイン権限、他システム連携、帳票など大きな追加
    5. 中身の分かりやすさ構成が整理され、説明資料がある説明資料がなく、作った本人にも説明できない

    1つの軸だけで決めないことがポイントです。たとえば、使う人は少なくても個人情報を扱うなら、点検や安全面の手直しは必須になります。

    軸1と2:「誰が・どんなデータで使うか」が最優先

    試作として数人で使うだけなら、多少粗くても「直して使い続ける」判断が合理的なことが多いです。一方、社外の顧客が使う、個人情報や取引先の情報を扱う、という場合は、安全面の点検が先です。点検の結果次第で、作り直したほうが結果的に早いと分かることもあります。

    軸3:寿命を決めると、かけてよい費用が決まる

    「半年だけ使うつなぎのツール」と「5年使う基幹業務」では、かけてよい費用が全く違います。寿命を先に決めておくと、開発会社も提案の幅を絞れます。

    軸4:足したい機能が大きいほど、土台の良し悪しが効く

    小さな画面修正なら今の作りのまま直せますが、権限管理や他システム連携のように、土台に手を入れる追加は、土台が弱いと工数が膨らみます。ここは診断で必ず確認してもらう部分です。

    軸5:説明できないものは、直すのが高くなりやすい

    作った本人も中身を説明できず、設計資料もない場合、開発会社は調査から始めます。調査の工数がかさむぶん、「直す」より「作り直す」のほうが見積もりが読みやすい、という結果になることがあります。AIで作ったアプリの引き継ぎ準備については、次の記事も参考になります。

    📰 出典:当ブログ「バイブコーディングで作ったアプリは開発会社に引き継げる?AI自作アプリの引き継ぎ準備と脆弱性・属人化対策」

    まず「診断」を依頼する:何を調べてもらうか

    「直す」「作り直す」の見積もりを同時に取るより、診断だけを小さく依頼するほうが、結果的に判断を誤りにくくなります。診断の依頼では、次の項目を調べてもらいましょう。

    1. 動作の確認:今の機能が、業務の手順どおりに動くか(月末処理や例外的な取引など、たまにしか起きないケースを含む)
    2. 安全面の点検:パスワードやAPIキー(=外部サービスを使うための鍵)がコードに直接書かれていないか、入力値のチェックがあるか、アクセス権限が適切か
    3. 構成の整理度:コードが機能ごとに整理されているか、同じ処理が何か所にも散らばっていないか
    4. 使っている部品とサービス:外部サービスや部品(ライブラリ)の種類、有料プランや個人アカウントへの依存がないか
    5. データの持ち方:データがどこに保存され、バックアップが取れるか、他のシステムに移せるか
    6. 直す場合・作り直す場合それぞれの概算と前提:金額だけでなく、何を前提にした見積もりか

    診断の結果は、書面(簡単なレポートで構いません)で受け取るようにしましょう。後で別の開発会社に相談するときにも使えます。

    診断後の3つの選び方

    診断の結果は、おおむね次の3つに分かれます。

    • そのまま直す:構成が整理されていて、安全面の問題も小さい。小さな修正を重ねて使い続ける
    • 一部だけ作り直す:画面や一部の機能は活かし、土台(ログイン、データの保存など)だけ作り直す。多くの場合の現実的な落としどころ
    • 全面的に作り直す:既存のアプリを「業務の見本(プロトタイプ)」として扱い、要件を整理し直して新しく作る。作ったアプリが無駄になるわけではなく、何が必要かを確かめた成果として活きる

    3つ目の「作り直し」は、失敗ではありません。AIで素早く作った試作によって要望が具体的になったからこそ、本番向けの設計を的確に頼めるようになった、とも言えます。

    やりがちな失敗

    • 診断なしで「作り直し」と決める:直せる状態のものまで新規開発になり、費用が膨らむ
    • 診断なしで「直せます」と進める:途中で土台の問題が見つかり、追加費用や遅れにつながる
    • AIの生成物の安全面を点検せずに公開する:個人情報の漏えいなど、取り返しのつかない問題につながりうる
    • 作った社員に聞かないまま判断する:どんな指示でAIに作らせたか、どんな業務を想定したかは、作った本人しか知らない貴重な情報
    • 「AIで作ったから安いはず」と見積もりを値切る:診断や点検の工数まで削ると、後で品質に響く

    発注者がやること チェックリスト

    • ☐ アプリを誰が・何人で・どんなデータで使うか書き出した
    • ☐ 今後何年使う予定かを決めた(試作/つなぎ/基幹業務)
    • ☐ 作った社員から、使ったAIツール、AIへの指示、想定した業務を聞き取った
    • ☐ ソースコードとデータの置き場所を確認した(個人アカウントに入っていないか)
    • ☐ 診断を小さな単位で依頼し、結果を書面で受け取ることを伝えた
    • ☐ 個人情報や取引情報を扱う場合、公開前に安全面の点検を入れると決めた
    • ☐ 「直す」「一部作り直す」「全面作り直す」の概算と前提を、同じ形式で出してもらった

    開発会社への質問例

    • 「このアプリを直す場合と作り直す場合で、それぞれの概算と、その前提を教えていただけますか」
    • 「診断では、動作・安全面・構成・使っている部品・データの持ち方を、どの範囲まで確認していただけますか。結果は書面でいただけますか」
    • 「土台に手を入れる追加(ログイン権限や他システム連携)をしたい場合、今の作りのままで対応できるでしょうか」
    • 「一部だけ作り直す場合、活かせる部分と作り直す部分はどう分かれそうですか」
    • 「作り直す場合に、今のアプリを要件整理の材料としてどう使えるか教えてください」

    まとめ

    AIで作ったアプリを直すか作り直すかは、「AIで作ったから」という理由ではなく、使う人・扱うデータ・寿命・追加したい機能・中身の分かりやすさの5つで考えるのが基本です。そのうえで、いきなり見積もりを比べず、小さな診断を依頼して、書面の結果をもとに3つの選択肢から選びましょう。

    古い仕組みの作り直しを検討する場合の準備については、次の記事も参考になります。

    📰 出典:当ブログ「古いフレームワークのシステムをリプレイスするときに必要な準備|費用・期間の見当と段階的に進める方法」

    システム再構築全般の考え方は、IPAの「システム再構築を成功に導くユーザガイド 第2版」(2018年)に、再構築手法の選び方や計画づくりとして整理されています。冊子の販売は終了していますが、IPAのアーカイブページで案内が確認できます。

    📰 出典:IPA「システム再構築を成功に導くユーザガイド 第2版」

    契約や費用の個別判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

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      この記事を書いた人

      株式会社THIRD HERO代表取締役 朝野貴朗
      Webシステム開発を中心に、toC向けサービスサイトの運営、ツール開発などを行ってまいりました。

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