「PHPのサポートが切れそうなので上げましょう」と開発会社に言われたものの、バージョンを上げた途端にサイトや業務システムが止まったらどうしよう、と不安になる方は少なくありません。
「PHPを新しいバージョンに上げると、今のサイトや業務システムが動かなくなるのではと心配。事前に何を確認してもらえばいいの?」
先に結論をお伝えします。PHPのバージョンアップで動かなくなるかどうかは、「上げてみる前」にかなりの部分を調べられます。発注者がやることは、技術的な判断ではなく、「事前の調査」「本番と同じ環境での試験」「元に戻せる準備」の3点を、開発会社に作業として依頼し、結果を見せてもらうことです。
この記事では、2026年10月時点のPHPのサポート状況を整理したうえで、バージョンを上げる前に確認したい5つのこと、そのまま使えるチェックリストと開発会社への質問例を紹介します。
PHPのバージョンは「いつまでに」上げる必要があるのか
まず、急ぐ必要があるのかどうかを確認しましょう。PHPは各バージョンに公式のサポート期限があり、期限が切れると、新しく見つかった脆弱性(=悪用されうる弱点)が修正されなくなります。
📰 出典:PHP公式「Supported Versions」
公式の説明によると、各バージョンは公開から2年間の「通常のサポート」と、その後さらに2年間の「セキュリティ修正のみのサポート」があり、合計4年で終了します。2026年10月26日時点の主なバージョンの状況は次のとおりです。
| バージョン | 公開日 | 通常サポートの終了 | セキュリティ修正の終了 | 2026年10月時点の状態 |
|---|---|---|---|---|
| 8.2 | 2022年12月8日 | 2024年12月31日 | 2026年12月31日 | セキュリティ修正のみ |
| 8.3 | 2023年11月23日 | 2025年12月31日 | 2027年12月31日 | セキュリティ修正のみ |
| 8.4 | 2024年11月21日 | 2026年12月31日 | 2028年12月31日 | 通常サポート中 |
| 8.5 | 2025年11月20日 | 2027年12月31日 | 2029年12月31日 | 通常サポート中 |
※ 上記は執筆時点(2026年10月)の公式情報です。最新の状況はPHP公式のページで確認してください。
つまり、今PHP 8.2を使っているシステムは、2026年12月末でセキュリティ修正が終わります。それより古い8.1以前を使っている場合は、すでに修正が出ない状態です。
一方で、期限が切れた当日にシステムが止まるわけではありません。「期限が来るまでに計画を立て、余裕を持って上げる」ことが現実的な目標です。急ぎで判断する場合の考え方は、次の記事も参考にしてください。


バージョンを上げると動かなくなることがあるのはなぜか
PHPは毎年、新しいバージョンが出ます。新しいバージョンでは、機能が増えるだけでなく、古い書き方が使えなくなったり、動き方が少し変わったりすることがあります。
PHP公式の移行ガイドでも、たとえばPHP 8.5では「いくつかの非互換な変更がある」ため、本番環境に切り替える前に試験するよう案内されています。
📰 出典:PHP公式マニュアル「PHP 8.4.x から PHP 8.5.x への移行」
動かなくなる主な原因は、次の3つに分けられます。
- システム自身のプログラム:古い書き方が残っている、公式が「非推奨(=将来使えなくなる予定)」と案内している機能を使っている
- 外部の部品(ライブラリ・プラグイン・テーマ):システムが利用している部品が、新しいPHPに対応していない
- サーバーの設定や拡張機能:PHPと一緒に入れている追加機能(画像処理や暗号化など)が、新しい環境で揃っていない
よく「PHPを上げたら画面が真っ白になった」という話が聞かれるのは、このうち外部の部品が対応していなかったケースが多いと言われます。逆にいえば、部品の対応状況を先に調べておけば、事故の多くは防げます。
上げる前に開発会社へ確認したい5つのこと
1. 今のPHPのバージョンと、上げる先のバージョン
最初に、現在のバージョンと、どこまで上げる予定かを書面で確認します。「新しいバージョン」という曖昧な言い方ではなく、「8.2から8.4へ」のように数字で決めてもらいましょう。
現在のバージョンが分からないときの調べ方は、次の記事で解説しています。


上げる先は、サポート期限が長いほど次の更新までの余裕が持てます。ただし、システム側の準備が追いつかないと、いきなり最新に上げるのが難しい場合もあります。その場合は「まず8.3へ、次に8.5へ」のように段階を踏む案もあります。
2. 使っている部品(ライブラリ・プラグイン・テーマ)の対応状況
WordPressならプラグインとテーマ、Laravelなど独自開発のシステムなら利用ライブラリの一覧を、開発会社に出してもらいます。確認してほしいのは、それぞれの部品が上げる先のPHPに対応しているか、そして開発元が今も更新を続けているかの2点です。
更新が止まっている部品が見つかったら、「入れ替える」「自社で直す」「使い続けるリスクを理解して残す」の3択を、費用と一緒に相談します。ここで見つかるものが、見積もりの増減に最も響きます。
3. システム自身のプログラムの調査結果
次に、システム自身のプログラムに古い書き方が残っていないかを調べてもらいます。開発会社は、PHPの互換性を自動で点検する専用のツールを使うのが一般的です。発注者は操作できなくて構いませんが、「点検した結果(問題が何件あり、どう直すか)」の報告をもらってください。
結果は「問題なし」「軽微な修正で済む」「大きな書き換えが必要」のように分けて説明してもらうと、判断しやすくなります。
4. 本番と同じ条件での試験(テスト環境)
本番のシステムでいきなり上げるのは避け、本番と同じ構成のテスト用の環境で、新しいPHPに切り替えて動作を確認してもらいます。確認の範囲は、次のように「業務で一番大事な流れ」から決めると漏れにくくなります。
- ログイン、注文、問い合わせ送信、請求書の出力など、止まると困る操作
- メール送信、決済、外部サービスとの連携
- 夜間のバッチ処理(自動で動く集計やデータ取り込み)
- 帳票のPDF出力やCSVの取り込み・書き出し
自動テスト(=プログラムで動作を確かめる仕組み)が整っていないシステムでは、人が画面を触って確認する時間が必要です。その工数は見積もりに含まれているか、あわせて確認しましょう。
5. 切り替えの手順と、元に戻す方法
最後に、本番へ切り替える日の手順と、うまくいかなかったときの戻し方を決めておきます。
- 切り替えの日時(アクセスの少ない時間帯か、業務を止めてよい日か)
- 切り替え前のバックアップ(データとプログラムの両方)
- 戻す場合の判断基準と所要時間(「何分以内に直らなければ戻す」など)
- 切り替え後の見守り(数日間、エラーが出ていないかを確認する)
これは、バージョンアップに限らずシステムの更新全般に共通する備えです。事前に決めておくと、万一のときも慌てずに済みます。
やりがちな失敗
- 「上げれば直る」と考えて、試験をせずに本番で切り替える:画面が真っ白になっても、戻し方が決まっていない
- 古いバージョンのまま放置する:期限が切れた後は、脆弱性が見つかっても公式の修正が出ません。一度に何段階も上げる必要が出て、費用が膨らみやすくなります
- レンタルサーバーの管理画面で、自分でバージョンを切り替える:切り替えること自体は簡単でも、動作確認が済んでいないと、サイトが突然表示されなくなることがあります。開発会社に確認してから行いましょう
- 開発会社の見積もりを「保守費の範囲」と思い込む:保守の契約にバージョンアップの作業が含まれているかは契約ごとに違います。事前に範囲を確認しておくと、後から「別料金だった」というすれ違いを避けられます
発注者がやること チェックリスト
- ☐ 現在のPHPバージョンと、上げる先のバージョンを数字で確認した
- ☐ 使っているPHPのサポート期限を確認し、いつまでに上げるか期限を決めた
- ☐ 部品(プラグイン・ライブラリ)の一覧と、対応状況の報告をもらった
- ☐ システムの点検結果(問題の件数と直し方)の報告をもらった
- ☐ テスト環境で確認する「業務で一番大事な流れ」を、自社で決めて伝えた
- ☐ 切り替えの日時・バックアップ・戻し方を書面で確認した
- ☐ 作業の費用が、保守費の範囲内か別見積もりかを確認した
開発会社への質問例
打ち合わせでそのまま使える質問を挙げます。
- 「現在のPHPのバージョンと、上げる先のバージョンを教えてください。サポート期限はいつまでですか?」
- 「使っているプラグインやライブラリのうち、新しいPHPに対応していないものはありますか? その場合の選択肢と費用を教えてください」
- 「システムの互換性の点検結果を、問題の件数と修正の目安がわかる形で共有してもらえますか?」
- 「本番と同じ構成のテスト環境で確認してもらえますか? 確認する範囲は、こちらの業務の流れに合わせて相談させてください」
- 「切り替え当日の手順と、うまくいかなかった場合に元へ戻す方法を教えてください。この作業は保守費に含まれますか?」
まとめ
PHPのバージョンアップで動かなくなるのは、運が悪いからではなく、事前の調べ物と試験が足りていないときに起きやすい問題です。
- PHPには公式のサポート期限がある。2026年10月時点では8.2のセキュリティ修正が2026年12月末で終わる
- 動かなくなる原因は、システム自身・外部の部品・サーバーの設定の3つ。特に部品の対応状況を先に調べる
- 発注者は、事前の調査結果・テスト環境での確認・戻し方の3つを、開発会社に作業として依頼して報告をもらう
- 作業が保守費の範囲内かは、最初に確認する
細かな技術の判断は開発会社に任せて構いません。発注者は「いつまでに」「何を確認したか」「戻せるか」の3つを押さえておけば、安心して進められます。
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