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    内製化のためにエンジニアを1人採用したい。何を任せて、どう評価する?初めてIT人材を迎える経営者が決める5つのこと

    「システムの修正のたびに開発会社へ依頼するのは時間も費用もかかる。そろそろ社内にエンジニアを1人置きたい」。そう考え始める中小企業の経営者は少なくありません。ところが、いざ採用しようとすると、求人票に何を書けばいいのか、入社後に何を任せるのか、どう評価すればいいのかが分からず、手が止まってしまいます。

    「内製化のためにエンジニアを1人採用したいけれど、何を任せて、どう評価すればいいのか分かりません…」

    先に結論をお伝えします。採用の前に決めておきたいのは、「そのエンジニアに任せる範囲」と「1年後にどうなっていれば成功か」の2つです。技術の細かい評価は、採用した本人や外部の専門家に頼れます。しかし「何を任せたいのか」は、経営者や事業部門にしか決められません。

    この記事では、初めてIT人材を採用する発注者側の経営者に向けて、任せる仕事の決め方、評価の考え方、開発会社との役割分担、そのまま使えるチェックリストと質問例を解説します。内容は一般論です。雇用条件や労務の個別の判断は、社会保険労務士など専門家に確認してください(執筆時点:2026年11月)。

    目次

    1人目のエンジニア採用がうまくいかなくなる3つの理由

    先に、よくあるつまずきの理由を押さえておきましょう。理由が分かると、何を決めておけばいいかが見えてきます。

    理由1:「何でもできる人」を期待してしまう

    エンジニアと一口に言っても、得意分野は大きく違います。画面を作るフロントエンド、サーバー側の処理を作るバックエンド、AWS などのクラウドの運用を担うインフラ、社内の IT 全般を見る情シス寄りの役割など、専門が分かれています。1人に「全部お願いします」と期待すると、本人にも会社にも無理が生じます。

    理由2:任せる仕事が入社後まで決まっていない

    「入ってから考えよう」という進め方だと、本人は最初の数か月、何をすればいいか分からないまま過ごすことになります。会社側も「何をしているのか見えない」と不安になり、お互いに不満がたまりやすくなります。

    理由3:評価する人が社内にいない

    経営者や上司がプログラミングに詳しくない場合、成果物の良し悪しを判断できません。結果として「忙しそうだから頑張っているはず」「質問されても分からないので任せきり」になり、評価が曖昧になります。評価が曖昧なままだと、本人も自分の成長や貢献を実感しにくくなります。

    IT人材の不足や育成については、公的機関も継続的に調査しています。

    📰 出典:IPA(情報処理推進機構)「DX白書」

    IPA の DX白書では、DX(=デジタル技術を使って業務や事業を変えていくこと)を進めるうえでの人材の確保や育成が、日本の多くの企業で課題になっていることが報告されています。1人目の採用に悩むのは、あなたの会社だけではありません。

    採用の前に決めたい5つのこと

    1. 任せる仕事を「3つ以内」に絞る

    最初に、そのエンジニアが担当する仕事を書き出します。ポイントは欲張らず3つ以内に絞ることです。たとえば次のように、自社の困りごとから逆算します。

    困りごと任せる仕事の例
    開発会社に頼むたびに時間がかかる小さな修正や画面の調整を社内で行う
    開発会社の見積もりや提案を判断できない開発会社との窓口になり、技術面の確認をする
    Excel や手作業が多い業務の自動化ツールを作る・導入する
    システムの障害や問い合わせに困る日常の運用・保守を見る

    「新しいシステムをゼロから全部作る」を1人目に任せるのは、負担が大きくなりがちです。大きな開発は引き続き開発会社に任せ、社内のエンジニアは開発会社とのつなぎ役と、小さな改善から始める形が、現実的な最初の一歩になりやすいです。

    2. 開発会社との役割分担を決める

    内製化は「開発会社をやめること」ではありません。採用したエンジニアと開発会社の間で、誰が何を担当するかを決めておきます。

    • 社内のエンジニア:業務の理解が必要な改善、日常の運用、開発会社への依頼内容の整理、納品物の受け入れ確認
    • 開発会社:新規開発、大きな機能追加、専門性の高い領域(セキュリティ診断、大規模なインフラ設計など)

    役割分担が曖昧だと、「それは社内でやるはずでは」「いや、お願いしたはずです」という行き違いが起きます。採用前に、既存の開発会社にも「社内にエンジニアが入ったら、どこまで引き継げますか」と相談しておくと安心です。

    3. 「1年後の姿」を成果の目安にする

    評価は、プログラムの行数や作業時間では測れません。代わりに、1年後にどうなっていれば成功かを、数字や状態で書いておきます。

    • 開発会社に依頼していた小さな修正のうち、半分を社内で対応できている
    • システムの障害や問い合わせに、まず社内で一次対応できている
    • 開発会社からの見積もりや提案を、社内で技術面から確認できている
    • 手作業で行っていた月次の集計作業を、自動化できている

    これらは例です。自社の状況に合わせて、2〜4個に絞って決めましょう。数字は正確でなくても、「だいたいこのくらい」で構いません。

    4. 評価の「見る人」と「見る場面」を決める

    プログラミングが分からなくても、評価はできます。見るのはコードの出来ではなく、仕事の進め方と成果です。

    見るポイント具体的な場面
    説明の分かりやすさ技術的な内容を、非エンジニアに分かる言葉で説明できているか
    優先順位の付け方緊急のもの・重要なものを自分で整理して相談できているか
    記録を残しているか作業の内容や手順を、後から引き継げる形で残しているか
    相談のタイミング困ったときに早めに共有しているか
    業務への貢献現場の担当者から「助かった」という声が出ているか

    技術的な質の確認が必要なときは、既存の開発会社や、スポットで頼める外部の技術顧問に、コードや設計を見てもらう方法もあります。月1回の1on1(=上司と本人が1対1で話す時間)を設けて、進み具合と困りごとを話す場を作るのも効果的です。

    5. 1人に頼りすぎない仕組みを作る

    1人目の採用で見落としがちなのが、その人が休んだり辞めたりしたときのリスクです。担当者が1人だけだと、退職した途端に誰も分からない状態になります(いわゆる属人化〔=特定の人しか分からない状態〕です)。

    • 作ったもの・設定・パスワードの管理場所を、会社の共有場所に記録してもらう
    • アカウントやサーバーの契約名義は、個人ではなく会社にしておく
    • 重要な作業は、手順書として残してもらう

    これは本人を疑うためではなく、本人が安心して休めるようにするための仕組みです。

    求人票・面接で伝えたい3つのこと

    採用活動では、次の3点を明確に伝えると、入社後のミスマッチを減らせます。

    1. 任せる仕事と、任せない仕事:前の章で決めた3つ以内の仕事と、開発会社が担当する範囲
    2. 相談できる相手の有無:社内に他のエンジニアがいない場合は、技術的な相談を誰にできるか(開発会社・技術顧問など)
    3. 評価の方法:1年後の姿と、評価する人・場面

    エンジニアにとって、「技術の相談相手がいない環境」は不安材料になりやすいものです。正直にそうだと伝えたうえで、外部の相談先や学習の支援(書籍代・勉強会の参加費など)を用意しておくと、応募する側も判断しやすくなります。

    なお、雇用形態(正社員・契約社員・業務委託など)や給与水準は、会社の状況や採用市場によって変わります。具体的な金額や条件は断定できませんので、求人サイトや人材紹介会社、専門家に相談して決めてください。

    IT人材に求められるスキルの整理には、経済産業省とIPAが公表している「デジタルスキル標準」が参考になります。

    📰 出典:経済産業省「デジタルスキル標準」

    デジタルスキル標準は、DX を進める人材の役割やスキルを整理した指針です。採用したい人物像を考えるときの、言葉の手がかりとして使えます。

    1人目の採用でありがちな失敗パターン

    • 「AIがあるから、1人でも何でもできるはず」と期待する:AI のコーディングツールは作業の助けになりますが、何を作るかの判断や、出力の確認は人が行う前提です。仕事の量や責任が減るわけではありません
    • 開発会社に何も言わずに採用を進める:引き継ぎや役割分担が決まっていないと、入社後に開発会社との間で混乱が起きます
    • 採用したあとは任せきりにする:最初の3か月は、特に定期的に話す場を設けましょう
    • 評価基準を後から決める:入社後に基準を決めると、本人には「後出し」に見えてしまいます。採用の段階で伝えておきましょう
    • 全部を社内で作ろうとする:大規模な開発や専門性の高い領域は、開発会社に任せたほうが早く安全な場合も多くあります

    発注者がやることチェックリスト

    • ☐ 自社の困りごとを書き出し、エンジニアに任せる仕事を3つ以内に絞った
    • ☐ 開発会社と社内エンジニアの役割分担を、ざっくり決めた
    • ☐ 既存の開発会社に、内製化を考えていることを相談した
    • ☐ 1年後の姿(成功の目安)を、2〜4個の言葉や数字で書いた
    • ☐ 評価する人と、評価する場面(月1回の1on1など)を決めた
    • ☐ 技術的な相談ができる外部の相手(開発会社・技術顧問)の候補を挙げた
    • ☐ アカウントやサーバーの契約名義が会社になっているか確認した
    • ☐ 求人票に、任せる仕事・任せない仕事・評価方法を書いた

    開発会社への質問例

    内製化を考えているとき、既存の開発会社にそのまま使える質問です。

    • 「社内にエンジニアを1人置く場合、どの作業なら引き継げそうですか? 逆に、引き続きお願いしたい作業はどれですか?」
    • 「新しく入る社内の担当者向けに、システムの構成や運用手順のドキュメントを用意していただくことはできますか?」
    • 「採用の面接で、技術面の確認だけお手伝いいただくことはできますか?」
    • 「社内で小さな修正をする場合、開発会社として気を付けてほしいルール(作業の手順、確認の流れなど)はありますか?」
    • 「内製に切り替えたあとも、困ったときに相談できる窓口やサポートの形はありますか?」

    こうした質問への答え方から、開発会社が内製化を前向きに支援してくれるかどうかも見えてきます。

    まとめ:採用の前に「任せる仕事」と「1年後の姿」を決める

    内製化のためにエンジニアを1人採用するとき、最初に決めておきたいことは次の5つです。

    • 任せる仕事を3つ以内に絞る
    • 開発会社との役割分担を決める
    • 1年後の姿を成果の目安にする
    • 評価する人と場面を決める
    • 1人に頼りすぎない仕組みを作る

    エンジニアの技術力を経営者が直接評価する必要はありません。「何を任せたいのか」「どうなれば成功か」を決めて、本人や開発会社と共有することが、発注者の大切な役割です。まずは、自社の困りごとを書き出して、エンジニアに任せる仕事を3つに絞るところから始めてみてください。

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