開発会社がAIコーディングツールを使っていると聞いて、「AIが現場のルールを勝手に覚えたり書き換えたりしていないか」が気になる発注者の方もいるのではないでしょうか。GitHubは2026年10月28〜29日の「GitHub Universe 2026」で、Copilotが裏で過去の作業を振り返り、AIへの指示やメモリを整える新機能「Copilot Dreaming」(パブリックプレビュー=正式提供の前の試用段階)を発表しました。
「開発会社のAIが、うちの案件のルールを勝手に覚えて書き換えている?費用や情報の扱いは大丈夫なのか、何を聞けばいいのか分からない…」
先に結論をお伝えします。稼働中のシステムに、今すぐ何かをする必要はありません。ただし、開発会社がこの機能を使うと、AI利用料が「使っていない日」にも発生し得ます。使う予定があるかと、費用の上限をどう決めるかを、次の定例で聞いておく価値があります。
この記事は、執筆時点(2026年11月)の公式ドキュメントにもとづき、ニュースの要点と、発注者にとって変わること・変わらないこと、開発会社への質問例をまとめたものです。仕組みの深掘りはせず、発注・費用・リスクへの影響に絞ります。
Copilot Dreamingとは?ニュースの要点
AIコーディングツールには、「このプロジェクトではこう書く」「テストはこのコマンドで動かす」といった指示を、指示ファイル(=AIに読ませるプロジェクトのルールを書いたファイル)に書いておく使い方があります。ところが、システムの作りやAIモデルが変わると、この指示が古くなってしまいます。Dreamingは、その古くなった指示やメモリ(=Copilotが覚えているプロジェクトの決まりごと)を、バックグラウンドで整理・更新する機能です。
公式ドキュメントとPublickeyの報道から、事実として確認できた点は次のとおりです。
| 項目 | 内容(執筆時点) |
|---|---|
| 何をするか | Copilotとの対話やプルリクエスト(=変更をレビューに出す単位)のレビューを分析し、メモリや指示ファイルを整える。Copilotの画面を開いていなくても動く |
| 3つの働き | リポジトリ(=プログラムの保管場所)のメモリ更新と指示ファイルの変更提案/個人のメモリの整理/コードレビュー用のガイダンス更新 |
| 変更の入り方 | メモリは自動で更新される。指示ファイルの変更は、プルリクエストとして届く。マージ(=2つの変更を1つにまとめること)するまでファイルは変わらない。コードレビューのガイダンスはプルリクエストなしで更新される |
| 提供状況 | パブリックプレビュー。対象は有料プランの一部で、Copilot Proは対象外。最初のプレビューでは特定のAIモデル(GPT-6.1 Sol)が必要 |
| 費用 | 既存のCopilot利用と同じ「AI credits」で請求され、別の費用項目にはならない |
📰 出典:GitHub Docs「Copilot Dreaming」
日本語の報道では、Publickeyが「GitHub、過去の作業を振り返ってメモリを整理する「Copilot Dreaming」発表」の趣旨で紹介しています。発表された例では、Javaで書かれたアプリをSvelte/JavaScriptで書き直したとき、Java前提だった指示ファイルを整理し直す提案が、プルリクエストとして届いたと説明されています。
📰 出典:Publickey「Copilot Dreaming」の発表記事(2026-11-05)
発注者にとって何が変わるか・変わらないか
ここからは、事実と区別して、筆者の見解です。
変わりそうなこと
- AI利用料が、人が作業していない時間にも発生し得る。 公式ドキュメントは、実行のたびにクレジットを消費し、変更が出なかった実行や、使われていないリポジトリを処理した実行も含むと説明しています。利用者やリポジトリが増えるほど、費用も増えます。
- 「AIに渡した情報が、どこに残るか」の論点が増える。 過去のセッション、メモリ、リポジトリの内容、レビューの指摘が材料になり得ます。どれを使うかは組織のポリシー(設定の取り決め)に左右されるため、開発会社の設定の確認が重要になります。
- 指示ファイルの変更がプルリクエストで届く。 人が内容を確認してマージするため、確認の手間が少し増えます。
変わらないこと
- 成果物の品質を確かめる責任は、契約上の役割で決まること。 AIがルールを整えても、その分担は変わりません。
- AIの出力は、人が確認する前提であること。 公式ドキュメントも、AIが作った指示は誤りの可能性があり、マージ前に確認するよう求めています。
- 対象は「AIへの指示と文脈」であって、AIモデルそのものではないこと。 公式ドキュメントも、更新されるのは文脈でモデルではないと説明しています。
今やるべきことと、様子見でいいこと
| やること | 様子見でよいこと |
|---|---|
| 開発会社がDreamingを使う予定があるか聞く | 正式提供の時期や対象プランの細かい動向 |
| AI利用料に上限や予算の設定があるか聞く | 既存のシステムの作り直しや契約の見直し |
| 自社の案件の情報が、メモリや指示ファイルにどう残るか聞く | 「賢くなるから開発費が下がる」という見込みを見積もりに反映すること |
発注者が確認したい5つのこと
1. 開発会社はDreamingを使う予定があるか
プレビュー段階なので、使っていない会社も多いはずです。使うなら、どの案件・どのリポジトリで有効にするのかを聞きます。有効にする範囲は、組織のポリシーやリポジトリの設定で決まると、公式ドキュメントにあります。
2. AI利用料の上限や予算アラートは設定されているか
公式ドキュメントは、拡大する前に支出の管理と予算を設定するよう勧めています。また、アラートだけでは利用は止まらず、Dreamingのアプリのインストールごとの個別の予算は用意されていない、とも書かれています。費用の増え方を、開発会社と事前に話しておくと安心です。
3. 自社の案件の情報は、メモリや指示ファイルにどう残るか
リポジトリ側のメモリは、書き込み権限のある人と共有される性質のものです。案件で扱う情報のうち、AIに渡してよい範囲を決めておくと、後から困りにくくなります。公式ドキュメントでは、提案された指示ファイルの変更はリポジトリにアクセスできる人から見える、とされています。
4. 変更は誰が確認してマージするのか
AIが提案した指示ファイルの変更を、誰が確認して取り込むのかを聞きます。マージ前の確認が決まっていれば、AIの誤りがそのまま残るリスクを減らせます。
5. 止めたいときに、元に戻せるのか
公式ドキュメントによると、Dreamingを止めても、すでに行われた変更が自動で元に戻るわけではありません。メモリ、リポジトリの記録、開いているプルリクエストは別に見直す必要があります。引き継ぎや契約終了のときに、整理の手順があるかを聞いておきましょう。
やりがちな失敗
- 「AIが勝手に覚えるのは危険だから禁止」と決めつける。 禁止よりも、使う範囲・費用の上限・確認の担当を決めるほうが現実的です。
- プレビュー機能の仕様や費用を、確定した前提にする。 公式ドキュメントも「変更される可能性がある」としています。
- 「AIが賢くなるから安くなる」と期待して見積もりを下げさせる。 仕様の確認や設計、受け入れの工程は変わらず必要です。
発注者がやること チェックリスト
- ☐ 開発会社がCopilotのDreamingを使う予定があるか確認した
- ☐ AI利用料の負担者と、上限・予算の設定を聞いた
- ☐ AIに渡してよい情報の範囲を、社内ルールと照らした
- ☐ 指示ファイルの変更を確認してマージする担当者を聞いた
- ☐ 止めるときや契約終了のときの整理の手順を聞いた
- ☐ 機能や費用が変わる可能性があることを、社内で共有した
開発会社への質問例
- 「GitHub Copilotの新機能Dreamingを、弊社の案件で有効にする予定はありますか。」
- 「Dreamingを使う場合、AI利用料に上限や予算の設定はありますか。見積もりに含まれますか。」
- 「弊社の案件の情報は、Copilotのメモリや指示ファイルにどのように残りますか。」
- 「AIが提案した指示ファイルの変更は、どなたが確認して取り込みますか。」
- 「利用を止めるときや、契約が終わるときの整理の手順を教えてください。」
まとめ
- GitHubは2026年10月のGitHub Universeで、Copilotが過去の作業を振り返ってメモリや指示を整える「Copilot Dreaming」(パブリックプレビュー)を発表しました。
- 稼働中のシステムに急ぎの対応は不要です。確認したいのは、使う予定・費用の上限・情報の残り方・変更を確認する担当の4つです。
- 機能や料金、対象プランは変わりやすいため、最新の内容は公式のドキュメントで確認してください。
同じ週に発表されたコードレビューの新機能についても、別の記事で整理しています。


法律や契約に関わる判断は、一般的な考え方の紹介にとどまります。個別の契約は、弁護士などの専門家や公式の窓口に確認してください。
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