「Excelの集計や転記を自動化する小さな社内ツールを、AIに作ってもらえないか」。Claude Code(クロード・コード)のようなAIコーディングツールが話題になり、プログラミング経験のない事務・営業・一人情シスの方からも、こうした相談を聞くようになりました。ただ、インストールの段階でつまずいたり、「AIがファイルを消した」という話を聞いて不安になったりする方も多いようです。
「非エンジニアの自分がClaude Codeで社内ツールを作れるのか。ターミナルの使い方も分からないし、AIが大事なデータを消さないかも心配…」
先に結論をお伝えします。自分の業務を楽にする小さなツール(ファイルの整理、Excel・CSVの集計、簡単な入力画面など)なら、非エンジニアでも作れる可能性は十分にあります。ターミナル(黒い画面)が苦手なら、デスクトップアプリから始める方法も公式に用意されています。
一方で、顧客データを扱うシステムや、社外の人が使うWebシステム、ほかの人が毎日頼りにする業務システムは、自作ではなく開発会社に相談する領域です。そして安全面では、「本番のデータや認証情報をAIに渡さない」「元に戻せる状態で作業する」という2つを守ることが何より大切です。この記事では、非エンジニアの方向けにClaude Codeの始め方と、発注者として決めておくことを解説します。
Claude Codeとは?非エンジニア向けに一言で
Claude Codeは、Anthropic社が提供するAIコーディングツールです。チャットのように日本語で頼みごとをすると、AIが自分でフォルダ内のファイルを読み、プログラムを書き、コマンド(コンピューターへの命令)を実行して作業を進めます。
📰 出典:Claude Code Docs「概要」
公式ドキュメントでは、Claude Codeはコードベースを読み取り、ファイルを編集し、コマンドを実行するツールで、ターミナル、IDE(=プログラムを書くための専用ソフト)、デスクトップアプリ、ブラウザで利用できると説明されています。
ChatGPTのような「答えを返してくれるチャット」と違うのは、AIがあなたのパソコン上のファイルを実際に作ったり書き換えたりする点です。だからこそ便利で、だからこそ権限(AIに何をさせてよいか)の設定が重要になります。
まず決めること:プランとデータの扱い
Claude Codeを使うには有料プランが必要
📰 出典:Claude Code Docs「高度なセットアップ」(認証)
執筆時点(2026年9月)の公式ドキュメントでは、Claude CodeにはPro、Max、Team、Enterprise、またはConsole(API)アカウントが必要で、無料のclaude.aiプランには含まれないとされています。料金は変わりやすいため、契約前に公式の料金ページで確認してください。
個人向けプランと法人向けプランでは「学習」の扱いが違う
会社の業務で使うなら、プラン選びで一番大切なのは料金よりも入力したデータがどう扱われるかです。
📰 出典:Claude Code Docs「Data usage」
| 区分 | 該当プラン | AIの学習への利用 | データの保持期間(標準) |
|---|---|---|---|
| コンシューマー(個人向け) | Free・Pro・Max | 設定がオンなら、Claude Codeでのやり取りも学習に使われる | 学習を許可:5年/許可しない:30日 |
| 商用(法人向け) | Team・Enterprise・API | 商用規約のもとでは、原則として学習に使わない | 30日 |
※執筆時点(2026年9月)の公式ドキュメントによる。個人向けプランの設定はいつでも変更できると案内されています。
業務のファイルを扱うなら、会社としてはTeamなどの法人向けプランを契約するか、個人向けプランを使う場合でも学習の設定をオフにするルールにしておくと安心です。「学習に使われなければ何を入れてもよい」わけではない点は、ChatGPTに社内情報を入れても大丈夫?で解説した考え方と同じです。
Claude Codeの始め方:ターミナルが苦手ならデスクトップアプリから
Claude Codeには複数の使い方があります。非エンジニアの方は、次の順で検討するのがおすすめです。
| 使い方 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| デスクトップアプリ | ターミナルを使いたくない人 | 有料プランが必要。アプリにClaude Codeが含まれる |
| ターミナル(CLI) | 公式の手順どおりに1行コピーして貼り付けられる人 | 黒い画面での操作に慣れが必要 |
| Web(claude.ai/code) | GitHub(=プログラムの保管・共有サービス)を使っている人 | GitHubのリポジトリ(=プログラムの保管場所)が必要 |
方法1:デスクトップアプリ(ターミナル不要)
📰 出典:Claude Code Docs「デスクトップアプリを始める」
公式のクイックスタートによると、手順は次のとおりです。
- 公式ページからMac用またはWindows用のアプリをダウンロードしてインストールする
- Claudeを起動し、Anthropicアカウントでサインインする
- 画面上部の「Code」タブを開く
- 「Local」を選び、「Select folder」で作業するフォルダを選ぶ
- やりたいことを入力し、表示される変更内容(差分)を確認して承認する
アプリにはClaude Codeが含まれているため、別途インストールする必要はないと案内されています。
方法2:ターミナルにインストールする
📰 出典:Claude Code Docs「新規ユーザー向けターミナルガイド」
ターミナルを使ったことがない人向けに、公式の日本語ガイドが用意されています。流れは「ターミナルを開く → インストール用の1行を貼り付けてEnter → 「claude」と入力してEnter → ブラウザでログイン」です。インストール用の1行は、公式ガイドに記載された次の文字列です(自己流に書き換えず、必ず公式ページからコピーしてください)。
- Mac:Spotlight(Cmd+Space)で「Terminal」を開き、次の1行を貼り付け
curl -fsSL https://claude.ai/install.sh | bash
- Windows:Win+Xで「Windows PowerShell(またはTerminal)」を開き、次の1行を貼り付け
irm https://claude.ai/install.ps1 | iex
起動後は、Escキーで作業の中断、「/help」でコマンドの確認、「exit」で終了できます。
方法3:Web版
📰 出典:Claude Code Docs「Claude Code をクラウドで始める」
ブラウザで claude.ai/code を開いて使う方法もありますが、原則としてGitHubのリポジトリを接続して使います。GitHubを使ったことがない方は、まずデスクトップアプリで慣れてからで十分です。
CLAUDE.mdは「このフォルダの作業ルール」
📰 出典:Claude Code Docs「Claude があなたのプロジェクトを記憶する方法」
CLAUDE.md(クロード・エムディー)は、作業フォルダに置く「AIへの申し送りメモ」です。Claude Codeは毎回の作業の開始時にこのファイルを読みます。「/init」と入力すると、ひな形を自動で作ってもらうこともできます。
非エンジニアの方なら、たとえば次のような内容を日本語で書いておくと、毎回同じ説明をせずに済みます。
- このツールの目的(例:毎月の売上CSVを部署別に集計する)
- 元データのファイルは上書きしない。結果は別のフォルダに保存する
- ファイルを削除する前に必ず確認する
- 説明は専門用語を使わずに日本語で
ただし公式ドキュメントでは、CLAUDE.mdは「コンテキスト(=参考情報)」であって、強制的な設定ではないとはっきり書かれています。「消さないで」と書いておけば安全、というわけではありません。本当に止めたい操作は、次の章で説明する権限の設定で止めます。
最初の社内ツールを作る流れ:頼む→計画→確認→実行
最初は、失敗しても困らない小さなものを選びましょう。たとえば「フォルダ内のCSVを1つのExcelにまとめて、部署ごとの合計を出す」程度です。
- 準備:新しい作業用フォルダを作り、本物のデータではなくコピー(できれば個人情報を除いたサンプル)を入れる
- 頼む:目的・入力・出力を具体的に書く(例:「inputフォルダのCSVを読み、部署別の月合計をoutputフォルダにExcelで保存したい」)
- 計画させる:いきなり作らせず、プランモード(=ファイルを変更せずに進め方だけ提案させるモード)で手順を出してもらう
- 確認する:どのファイルを作り・変えるのか、差分表示で確認してから承認する
- 動かして結果を確かめる:手計算やExcelの集計と結果が一致するか、自分の目で検算する
📰 出典:Claude Code Docs「権限モードを選択する」
プランモードには、ターミナルでは「Shift+Tab」で切り替えられ、デスクトップアプリではモードの選択欄から選べます。AIが作ったものが正しいかどうかを最終的に判断するのは使う人自身です。「動いたから正しい」とは限らないので、検算の手間は省かないでください。
AIがデータを消さないための安全対策
「AIエージェントが本番のデータを消した」という話が気になっている方も多いと思います。完全にゼロにする方法はありませんが、被害を小さくする方法ははっきりしています。
1. 権限モードを理解して、慣れるまでは確認を多めに
公式ドキュメントでは、次のような権限モードが用意されています(執筆時点:2026年9月)。
| モード | 確認なしで実行されるもの | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Manual(default) | 読み取りのみ | すべての操作を自分で確認したいとき |
| acceptEdits | 読み取り・ファイル編集・一般的なファイル操作 | 変更内容を見ながら繰り返し直すとき |
| plan | 読み取り(変更はしない) | 作る前に進め方を確認したいとき |
| auto | すべて(別のAIによる安全チェック付き) | 長い作業で確認の手間を減らしたいとき |
注意したいのは、執筆時点ではPro・Max・Teamプランの開始時のモードがautoになっている点です。autoモードでは、別のAI(分類器)が危険な操作を事前にチェックし、本番環境へのデプロイ(=公開作業)などは既定でブロックする仕組みがあります。ただし公式ドキュメント自身が「安全性を保証しません」と明記しています。慣れないうちは、Manualモードやプランモードに切り替えて使うと安心です。
2. 本番のデータや認証情報をAIの届く場所に置かない
もっとも確実な対策は、AIが触れる範囲に本物を置かないことです。
- 基幹システムや顧客データベースのパスワード、APIキー(=サービスに接続するための鍵)を作業フォルダに置かない
- 共有フォルダやクラウドストレージの本番データを直接開かせず、コピーで作業する
- 作業フォルダはデスクトップ全体や書類フォルダではなく、専用の小さなフォルダにする
📰 出典:Claude Code Docs「権限を設定する」
さらに、「/permissions」で開く設定画面から、特定のファイルやコマンドを禁止(deny)するルールを追加できます。公式ドキュメントでは、たとえば Read(./.env) のようなルールで、パスワード類を保存したファイルの読み取りをブロックする例が紹介されています。権限ルールはAIの判断ではなくClaude Code側で強制されるため、CLAUDE.mdに書くより確実です。設定が難しいと感じたら、ここは社内外の詳しい人に手伝ってもらいましょう。
3. 元に戻せる状態で作業する(チェックポイントとGit)
📰 出典:Claude Code Docs「チェックポイント」
Claude Codeには、AIが編集したファイルを以前の状態に巻き戻す「チェックポイント」機能があり、「/rewind」またはEscキー2回で呼び出せます。ただし公式ドキュメントによると、コマンドで削除・移動したファイルや、外部への変更は巻き戻せません。また「バージョン管理の代替ではない」とされています。
そのため、次の2つを併用しましょう。
- Git(=ファイルの変更履歴を残す仕組み):Claude Code自身に「Gitで変更履歴を管理して、区切りごとに保存して」と頼めます
- 通常のバックアップ:作業フォルダを定期的に別の場所へコピーしておく
非エンジニアが自作できること・開発会社に任せるべきこと
「作れるかどうか」よりも、「作ったあと誰が責任を持てるか」で線を引くのが現実的です。
| 自作を検討しやすいもの | 開発会社への相談をおすすめするもの |
|---|---|
| 自分や少人数のチームだけが使う | 部署をまたいで大勢が毎日使う |
| 社内のファイル整理・集計・変換 | 顧客情報・個人情報・決済を扱う |
| 止まっても手作業で代わりがきく | 止まると業務や売上が止まる |
| パソコン内で完結する | 社外の人が使うWebシステム、インターネットに公開する |
| 基幹システムとは連携しない | 基幹システム・会計ソフトなどとデータ連携する |
右の列に当てはまるものは、作ることよりセキュリティ対策・障害対応・担当者が辞めたあとの保守が難しくなります。ノーコードやSaaSで済む場合もあるので、選択肢の比較はノーコード・SaaS・スクラッチの選び方も参考にしてください。
「自作したツールは、開発会社に依頼するときの『動く見本』としても役立ちます。完成度より、何をしたいかが伝わることが大事なんです」
開発会社への伝え方は作りたいシステムを開発会社にどう伝える?で詳しく解説しています。
発注者がやることチェックリスト
- ☐ 業務で使うプラン(法人向けか個人向けか)と、学習設定の扱いを社内で決めた
- ☐ AIに入れてよい情報・入れてはいけない情報(顧客情報・認証情報など)を決めた
- ☐ 作業用の専用フォルダを作り、本物ではなくコピーやサンプルデータで試している
- ☐ CLAUDE.mdに目的と作業ルール(元データを上書きしない等)を書いた
- ☐ 慣れるまではManualモードやプランモードで、変更内容を確認してから承認している
- ☐ パスワード・APIキーを作業フォルダに置かず、必要ならdenyルールで読み取りを禁止した
- ☐ Gitやバックアップで、元に戻せる状態を作ってから作業している
- ☐ 作ったツールの結果を、手作業の集計などで検算した
開発会社への質問例
自作の相談や、IT支援をお願いしている会社との打ち合わせでそのまま使える質問です。
- 「社内でClaude Codeを試したいのですが、権限の設定やフォルダの分け方を一緒に決めてもらえますか?」
- 「自作したこのツールを、部署全体で使える形にするには、何が足りませんか?」
- 「このツールで扱うデータは、自作で扱ってよい範囲ですか?セキュリティ面で気になる点はありますか?」
- 「自作の見本をもとに正式に開発する場合、費用や期間の目安はどのくらい変わりますか?」
- 「御社でAIコーディングツールを使う場合、データの扱いや本番環境へのアクセスはどう管理していますか?」
まとめ:小さく試し、守りを固め、広げる前に相談する
非エンジニアでも、Claude Codeで自分の業務を楽にする小さなツールを作れる可能性は十分にあります。大切なのは次の3点です。
- 始め方:ターミナルが苦手ならデスクトップアプリから。業務利用ならプランとデータの扱いを先に決める
- 守り方:本番データや認証情報を渡さない、権限ルールで止める、Gitやバックアップで元に戻せるようにする
- 線の引き方:顧客情報・社外公開・多人数の業務利用になったら、開発会社に相談する
AIが作ったものを確認し、責任を持つのは使う人です。まずは失敗しても困らない小さな作業から試し、社内で広げたくなった段階で、専門家と一緒に「業務で使える形」に仕上げていきましょう。
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