iPhoneやAndroidのOSが新しくなった途端、自社のスマホアプリが起動しない、画面が崩れる、一部の機能だけ動かない。そんな連絡を受けて、慌てて開発会社に相談する方は少なくありません。
「スマホのOSが更新されてアプリが動かなくなった。これって保守費用に含まれるものなのか、別料金なのか分からない…」
先に結論をお伝えします。OS更新への対応が保守費用に含まれるかどうかは、「契約書にどう書いてあるか」で決まります。「不具合の修正」だけが含まれている契約と、「新OSへの対応」まで含まれている契約があり、後者でも対応の範囲に上限があるのが一般的です。まずは契約書の保守の項目を確認し、そのうえで開発会社に「今回の件はどの項目にあたるのか」を聞くのが最短ルートです。
この記事では、スマホアプリを運用している発注者向けに、OS更新で動かなくなる理由、保守費用に含まれるかの見分け方、開発会社との話し合い方を、そのまま使えるチェックリストと質問例とあわせて解説します。
なお、契約の解釈は個別の契約書によって異なります。ここでは一般的な考え方を紹介しますので、紛争になりそうな場合は弁護士などの専門家に確認してください。
スマホのOSが更新されるとアプリが動かなくなる3つの理由
「何も変えていないのに、なぜ急に動かなくなるのか」と不思議に思うのは自然なことです。理由が分かると、費用の線引きも見えやすくなります。
理由1:OSの仕様変更に、アプリの作りが合わなくなる
OS(=スマホの基本ソフト。iOSやAndroid)は毎年大きく更新されます。その際、通知の出し方、位置情報や写真へのアクセスの許可の取り方、バックグラウンドでの動かし方などが変わることがあります。アプリが古い方法のまま作られていると、新しいOSでは動かない部分が出てきます。
理由2:アプリが使っている外部の部品が追従できていない
アプリは、地図・決済・ログイン・通知などの外部の部品(ライブラリやSDK)を組み合わせて作られています。OSが変わったときに、その部品の提供元が対応版を出すまで、アプリ側でも動かない機能が出ることがあります。この場合、アプリを作った開発会社だけでは直せず、部品の更新を待つ必要もあります。
理由3:ストアのルールで「新しいOS向けの作り」が求められる
アプリストアには、アプリを公開し続けるためのルールがあります。たとえばAppleは、App Storeにアップロードするアプリについて、2026年4月28日以降はXcode 26以降のiOS 26 SDKなどでビルドすることを求めています(執筆時点:2026年10月)。
📰 出典:Apple Developer「SDK minimum requirements」
Googleも、Google Playで新規アプリや更新版を公開する場合に、2026年8月31日以降はAndroid 16(APIレベル36)を対象にすることを求めています。既存アプリもAndroid 15(APIレベル35)以上を対象にしていないと、新しいOSの端末を使う新規ユーザーから見つけにくくなるとされています。期限延長の申請ができる仕組みもあります(執筆時点:2026年10月)。
📰 出典:Google Play Console ヘルプ「Target API level requirements for Google Play apps」
また、Appleのガイドラインには、アプリを最新の状態に保ち、将来のOSでサポートされなくなる機能は段階的に使わないようにすること、正常に動作しなくなったりサポートされなくなったりしたアプリはApp Storeから削除される可能性があることが書かれています。
📰 出典:Apple Developer「App Review Guidelines」
つまりOS対応は、「たまたま起きるトラブル」ではなく、アプリを公開し続ける限り毎年ほぼ必ず発生する作業です。だからこそ、契約の段階で扱いを決めておくことが大切です。
OS更新への対応は保守費用に含まれる?3つのパターン
保守契約の書き方は会社ごとに違いますが、OS更新への対応は次の3パターンに分かれることが多いです。
| パターン | 契約の書きぶり(例) | OS更新への対応 |
|---|---|---|
| ① 不具合修正のみ | 「納品物の不具合(バグ)を修正する」 | 新OSで動かない件が「不具合」にあたるかは解釈が分かれる。別料金になりやすい |
| ② 軽微な対応を含む | 「OS・ブラウザの更新に伴う軽微な修正」 | 小さな修正は含まれるが、作業量が大きいものは別途見積もり |
| ③ 年次対応を含む | 「年1回のOSメジャーバージョン対応」 | 回数や工数の範囲内で含まれる |
ポイントは、同じ「保守」という言葉でも、中身は別物だということです。「保守に入っているのに別料金と言われた」という行き違いの多くは、発注者が「何でも直してもらえる」と思い、開発会社は「不具合修正の範囲」と考えていたことから生まれます。どちらかが悪いわけではなく、確認していなかったことが原因であるケースがほとんどです。
不具合と「仕様変更への追従」の違い
開発会社が別料金とする場合、多くは「納品時点では正しく動いていたものが、OS側の変更で動かなくなったので、納品物の不具合ではない」という考え方です。一方で発注者から見れば「使えなくなったのだから直してほしい」と感じるのは当然です。この溝を埋めるには、契約書の文言と、過去の見積もり・仕様書を一緒に確認するのが近道です。
動かなくなった時にまずやる4つのステップ
ステップ1:何が・どの端末で・いつから起きているかを記録する
「アプリが動かない」だけでは調査できません。次のメモを作って開発会社に渡すと、原因の特定が早くなります。
- 端末の機種とOSのバージョン(例:iPhone 15・iOS 26)
- 起きている症状(起動しない/ログインできない/特定の画面だけ崩れる)
- 起き始めた日と、OSを更新した日
- 再現手順(どの画面で何を押すと起きるか)
- 画面のスクリーンショットや画面録画
ステップ2:影響範囲を確認する
全ユーザーに起きているのか、新しいOSの端末だけなのかで、緊急度は大きく変わります。ストアのレビューや問い合わせ窓口の件数も見て、開発会社に共有しましょう。
ステップ3:契約書の保守の項目を確認する
先ほどの3パターンのどれにあたるかを確認します。見るべきは次の項目です。
- 保守の対象範囲(不具合修正/OS対応/機能追加のどこまでか)
- 対応時間と連絡方法(平日のみか、緊急時の窓口があるか)
- 月額に含まれる作業時間や回数の上限
- 範囲外の作業をするときの見積もりの取り決め
ステップ4:開発会社に「内訳つきの見積もり」を依頼する
別料金になる場合は、「調査」「修正」「テスト」「ストア再申請」に分けた内訳をもらいましょう。分けてもらうことで、何にいくらかかるのかが分かり、他社に相談するときの材料にもなります。
OS更新で慌てないために、契約と運用で決めておくこと
毎年のOS対応を「年間の計画」に入れる
iOSとAndroidは毎年メジャーアップデートがあるため、発表されてから正式版が出るまでの期間に、事前の動作確認を行う運用にしておくと、慌てずに済みます。開発者向けのベータ版が公開されるため、開発会社はその期間にテストできます。この事前確認を保守に含めるかどうかも、確認しておきたい点です。
対象のOSバージョンの範囲を決めておく
古いOSまで対応しようとすると、確認の手間が増えて費用も上がります。「直近◯世代のOSに対応する」「利用者の◯%をカバーする範囲に絞る」のように、サポートする範囲を決めておくと、費用が読みやすくなります。利用状況は、アプリの分析ツールで確認できます。
外部の部品の更新状況を把握する
アプリが使っている部品の一覧と、その更新状況を定期的に確認してもらうと、OS更新のタイミングで慌てにくくなります。部品の提供元が更新を止めてしまっている場合は、代わりの部品への入れ替えが必要になることもあります。
やりがちな失敗
- 「保守に入っているから全部直してもらえる」と思い込む:範囲を確認しないまま、後から別料金と言われて驚くパターンです。
- ベータ版の時期を見逃す:OSの正式公開後に不具合の報告が届いてから動き出すと、修正とストアの審査の間、ユーザーを待たせることになります。
- ストアからの通知メールを見落とす:AppleやGoogleからは、対応が必要な場合に登録アドレスへ通知が届きます。誰が受け取るのか(開発会社か自社か)を決めておきましょう。
- 開発会社の変更でアカウントの権限が曖昧になる:ストアの開発者アカウントは発注者名義にしておくと、会社を変えるときにも対応しやすくなります。
発注者がやること チェックリスト
- ☐ 契約書の保守の項目に「OS更新への対応」が含まれているか確認する
- ☐ 含まれる場合、回数・工数・対象OSの範囲の上限を確認する
- ☐ 毎年のOSメジャーアップデート時に、事前の動作確認をしてもらうか決める
- ☐ サポートするOSバージョンの範囲を開発会社と合意しておく
- ☐ ストアの開発者アカウントの名義と、通知メールの受け取り担当を確認する
- ☐ 症状・端末・OSバージョン・再現手順を記録して開発会社に渡せるようにする
- ☐ 別料金の場合は、調査・修正・テスト・再申請の内訳つき見積もりをもらう
- ☐ 使っている外部の部品の一覧と更新状況を、定期的に共有してもらう
開発会社への質問例
打ち合わせや問い合わせメールで、そのまま使える質問です。
- 「今回の不具合は、現在の保守契約のどの項目にあたりますか。契約書の該当箇所を教えてください。」
- 「毎年のiOS・Androidのメジャーアップデートへの対応は、保守費用に含まれますか。含まれない場合の目安の工数を教えてください。」
- 「OSのベータ版が公開された時点で、事前に動作確認をしていただくことは可能ですか。その場合の費用はどうなりますか。」
- 「今回の修正の見積もりを、調査・修正・テスト・ストア申請に分けて出していただけますか。」
- 「アプリが使っている外部の部品のうち、更新が止まっているものはありますか。入れ替えが必要になる場合の見通しも教えてください。」
まとめ
スマホのOS更新でアプリが動かなくなったとき、保守費用に含まれるかどうかは、契約書の書き方で決まります。
- OS更新への対応は毎年ほぼ必ず発生する作業で、ストア側のルールでも新しいOS向けの更新が求められる
- 保守は「不具合修正のみ」「軽微な対応を含む」「年次対応を含む」の3パターンがあり、中身は会社ごとに違う
- 慌てないために、事前の動作確認・対応OSの範囲・通知の受け取り担当を決めておく
- 別料金になる場合は、内訳つきの見積もりで中身を確認する
契約の中身が分かりにくい、見積もりが妥当か判断できないといったときは、第三者の視点で整理するだけでも状況が見えやすくなります。
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