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    開発会社への相談で社内の実データや資料を見せてもいい?NDAの前に決める3つの線引きと、渡し方のルール

    「見積もりの相談で、実際に使っているExcelを見せてほしいと言われた。でも、お客様の名前や取引先の情報が入っている。見せていいのだろうか」。システム開発を相談し始めたばかりの発注者から、よく聞かれる悩みです。

    「相談の段階で、社内の実データや業務資料を開発会社に見せてもいいのか分からない…」

    先に結論をお伝えします。実データを見せてよいかは「相手を信頼できるか」ではなく、「情報の重さ」と「渡し方のルール」で決めます。最初の相談は、見本データ(名前や金額を置き換えたもの)で十分に進められます。本物のデータが必要になるのは、多くの場合、要件を固めたあとの工程です。

    この記事では、相談段階で情報を3段階に分ける方法、NDA(秘密保持契約=相手に渡した情報を外に出さない約束を書面にしたもの)を結ぶタイミング、そのまま使える渡し方のチェックリストと開発会社への質問例をまとめます。法律の個別判断はできないため、一般的な考え方の紹介にとどめます(執筆時点:2026年10月)。

    目次

    相談段階で、開発会社が「実データ」を見たがる理由

    開発会社は決して、情報を集めたいわけではありません。見積もりの精度を上げるために、実際の資料を見たいのです。

    開発会社が見たいもの見て分かること
    現在使っているExcelや帳票項目の数、入力のルール、例外の多さ
    実際のデータ(数百行など)表記ゆれ、空欄、過去データの量
    業務の流れが分かる資料承認の段階、関わる部署や人数

    特にExcelからの移行では、「書かれていない例外」が見積もりを大きく左右します。そのため、実物を見たいという依頼は自然なものです。ただし、見てもらう目的を満たす最小限の形にして渡すのが、発注者側の守り方です。

    情報を3段階に分ける:見せてよいもの・加工すれば見せられるもの・見せないもの

    実データを渡す前に、まず社内の情報を3つに分けます。これだけで、「全部見せる」「全部断る」という極端な判断を避けられます。

    段階例相談段階での扱い
    A. そのまま見せてよい社内の業務フローの図、空の帳票、画面の項目名NDA前でも可。ただし社外秘の表記があれば確認する
    B. 加工すれば見せられる取引先名・氏名・金額を置き換えた見本データ、数十行に絞った抜粋加工してから渡す。NDAを結んでから渡すのが無難
    C. 見せない(または後の工程で)個人情報を含む名簿、マイナンバー、認証情報、未公表の財務情報相談段階では渡さない。必要になったら契約と管理方法を決めてから

    見分ける目安は、「流出したときに、誰かが困るか」です。取引先の名前、顧客の氏名・連絡先、価格表などは、流出すると取引先や顧客に迷惑がかかるため、B以上として扱います。

    📰 出典:経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」

    経済産業省はこのハンドブックで、企業が持つ秘密情報を漏えいから守るための対策を、取引先に渡す場面も含めて整理しています。ハンドブックには、秘密保持契約書の参考例も載っています。内容は改訂されることがあるため、実際に使うときは最新版を確認してください。

    個人情報が入っているときは、別のルールがある

    氏名・住所・電話番号など、特定の個人が分かる情報(個人情報)が入った資料は、「秘密にする」だけでは足りません。個人情報保護法では、開発のために個人データを開発会社へ渡す場合、渡す側が委託先を適切に監督する義務があるとされています。

    📰 出典:個人情報保護委員会「個人情報保護法 Q&A」(委託・委託先の監督の項目)

    一般に、委託先に預ける形であれば、本人の同意を個別に取らなくてよい場合があります。そのかわり、委託先の選定、契約、取扱状況の把握といった監督が必要になります。どこまでが「委託」に当たるかは状況によって変わるため、個人データを渡す前に、社内の担当者や専門家、個人情報保護委員会の窓口に確認してください。

    実務上いちばん簡単なのは、相談段階では個人情報を一切渡さないことです。氏名を「顧客A」「顧客B」に置き換えるだけで、見積もりの目的はたいてい果たせます。

    NDAは「いつ」結ぶ?相談の最初から必須とは限らない

    NDAは大切ですが、すべての相談の1回目に必要というわけではありません。目安は次のとおりです。

    渡すものNDAひとこと
    要望の概要、やりたいことの説明不要なことが多い公開できる範囲の説明にとどめる
    加工した見本データ、社内の業務資料(段階B)結ぶのが無難目的を「見積もりのため」と限定する
    実データ、個人情報(段階C)必須。さらに管理方法も決めるNDAだけで終わらせない

    NDAに入っていると安心な項目は、次の5つです。

    • 何を秘密情報とするか(資料、口頭の説明、見本データなど)
    • 使ってよい目的(「見積もりと提案のため」に限る)
    • 第三者への開示の可否(再委託先、協力会社、AIツールを含むか)
    • 期間と、終了時の返却・削除
    • 漏えいが起きたときの連絡

    最近は、開発会社が資料をAIツールで読み込む場面も増えています。このため、AIに入力してよいかをNDAや事前の取り決めで確認しておくと安心です。詳しくは、次の記事も参考になります。

    実データを渡すときの5ステップ

    1. 目的を一文で決める:「見積もりのため」「項目設計のため」など。
    2. 必要な範囲に絞る:全件ではなく数十行、必要な列だけ。
    3. 加工する:氏名・取引先名・金額・電話番号などを置き換える。置き換えた対応表は社内に残す。
    4. 渡し方を決める:メール添付ではなく、アクセス期限と閲覧者を限定できる共有方法にする。
    5. 終わったら削除を依頼する:見積もりが終わったら、受け取った資料の削除(または返却)を書面かメールで確認する。

    やりがちな失敗

    • 「急ぎだから」と、顧客名簿をそのままメールで送ってしまう。
    • NDAを結ぶ前に、見本の範囲を超えた実データを渡してしまう。
    • 相談が終わっても、相手のもとに資料が残り続けていることを確認しない。
    • 逆に、すべてを「秘密」として何も見せず、見積もりが大幅にぶれてしまう。

    どちらか一方が悪いという話ではありません。見せる目的と範囲を、発注者が先に決めておくことで、開発会社も安心して正確な見積もりを出せます。

    発注者がやること チェックリスト

    • ☐ 渡したい資料を、A(そのまま可)・B(加工)・C(渡さない)に分けた
    • ☐ 個人情報が入っていないか、全シートと全列を確認した
    • ☐ 取引先名・氏名・金額を置き換えた見本データを用意した
    • ☐ 見せる目的を「見積もりのため」などと限定して伝えた
    • ☐ 実データや見本データを渡す前にNDAを結んだ(または結ぶ段取りがある)
    • ☐ 渡し方(共有方法・閲覧者・期限)を決めた
    • ☐ 終了後の削除(返却)の確認方法を決めた
    • ☐ 個人情報を含む場合は、社内の担当者または専門家に確認した

    開発会社への質問例

    • 「見積もりのために見てもらいたい資料は、見本データ(取引先名などを置き換えたもの)で足りますか。足りない部分はどこですか」
    • 「受け取った資料は、どこに保存し、どなたが見られますか。再委託先や協力会社にも共有されますか」
    • 「資料の内容をAIツールに入力することはありますか。ある場合、入力した内容が学習に使われない設定になっていますか」
    • 「見積もり完了後、受け取った資料はいつまでに削除していただけますか。削除の連絡はいただけますか」
    • 「NDAのひな形はそちらにありますか。当社のひな形を使ってもよいですか」

    まとめ

    相談段階で実データを見せてよいかは、「信頼できる会社かどうか」だけで決めるものではありません。情報を3段階に分け、加工した見本データで始め、実データは契約と管理方法を決めてから渡す。これだけで、リスクを抑えながら、見積もりの精度も保てます。

    どの資料が段階A・B・Cのどれに当たるか迷ったら、資料を渡す前に開発会社へ「この資料は見積もりに必要ですか」と聞いてみてください。

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      この記事を書いた人

      株式会社THIRD HERO代表取締役 朝野貴朗
      Webシステム開発を中心に、toC向けサービスサイトの運営、ツール開発などを行ってまいりました。

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