Azureのメール・SMS送信サービス「Azure Communication Services(ACS)」が2028年9月30日で終了すると発表されました。前の記事では、「自社のシステムが使っているかを確認する」ところまでをお伝えしました。では、使っていた場合、どこに乗り換えればいいのでしょうか。
「ACSを使っていると分かった。移行先の候補にはどんなものがあって、何が違うの?」
先に結論をお伝えします。移行先は「メール」と「SMS」で分けて考え、まず『誰宛てに送っているか』で絞り込むのが近道です。 社内宛てのメールなら Microsoft 365 の機能で足りる場合があります。お客様宛てのメールやSMSは、専用の配信サービス(外部のサービス)を選ぶのが基本になります。
この記事では、公式情報で確認できた範囲で、移行先の候補とそれぞれの特徴を整理します(情報は2026年10月時点。料金・仕様・対象地域は変わることがあるため、最終確認は各社の公式ページでお願いします)。
まず確認:ACSで終了するもの
Microsoftの公式ガイドによると、2028年9月30日に終了する対象には、メール、SMS、チャット、WhatsApp連携、電話番号提供などが含まれます。この記事では、特に使われやすいメール送信とSMS送信の移行先を扱います。
📰 出典:Microsoft Learn「Retirement and breaking changes guide for Azure Communication Services」
同ガイドでは、既存の環境は終了日まで使い続けられること、移行期間中は新機能の追加ではなくセキュリティなどの修正が中心になることが示されています。慌てて決める必要はありませんが、比較と検証に時間をかけられるよう、早めに候補を知っておくと安心です。
メール送信の移行先候補
候補1:Microsoft 365のHigh Volume Email(HVE)
Microsoftが案内する移行先の1つで、アプリや機器から大量に送る業務メール向けの仕組みです。公式ガイドの比較表では、執筆時点では社内(同じテナント内)宛ての送信が対象とされています。
- 向いている場合:社内への通知メール(承認依頼、業務アラートなど)
- 特徴:Microsoft 365のライセンスの範囲で使える。専用アカウントを使い、メールボックスやライセンスは不要とされている
- 注意点:お客様や取引先など、社外宛てには使えない(執筆時点)。1通あたりの宛先数などの制限もある
候補2:Exchange Online
Microsoft 365に含まれるメールの仕組みです。ガイドでは、個人の業務メール向けの設計で、社内・社外に送れるものの、大量配信向けではなく、送信量に制限があると説明されています。
- 向いている場合:送信量が少ない、担当者が送る業務メールに近い通知
- 特徴:すでにMicrosoft 365を使っていれば追加の契約が不要
- 注意点:会員向けの一斉通知や、利用者が増える会員サイトのメールには向かない
候補3:クラウド事業者のメール送信サービス(例:Amazon SES)
AWSの「Amazon Simple Email Service(SES)」は、自分のメールアドレスやドメインを使って、注文確認などの取引メール、お知らせ、メルマガを送れるサービスです。AWSのドキュメントでは、メールサーバーの運用やIPアドレスの評判管理といった負担を減らせることが利点として説明されています。
- 向いている場合:お客様宛ての取引メール、通知メール(会員登録の確認、パスワード再設定など)
- 特徴:APIとSMTPの両方で送れる。ドメイン認証(DKIM)の設定機能がある。AWSのほかのサービスと連携しやすい
- 注意点:AWSのアカウント管理が新たに必要になる。ドメインの認証設定、送信実績の積み上げ(送信量を徐々に増やすこと)が必要になる場合がある
候補4:Microsoftが案内するパートナー(Infobip、Telesign)
Microsoftの移行ガイドは、メール・SMSなどの移行先として、Microsoft Marketplace経由で提供されるパートナーのInfobipとTelesignを挙げています。
- 向いている場合:メールもSMSも1社にまとめたい、Azureとの契約まわりをMicrosoft Marketplace経由で整理したい
- 特徴:メール・SMSなど複数のチャネルを扱う事業者(CPaaSと呼ばれます)
- 注意点:提供範囲や料金は事業者ごとに異なる。日本国内の送信や、日本語のサポート体制は個別に確認が必要
候補5:国内外のメール配信専門サービス
メールの配信に特化した国内外のサービスも多数あります。到達率(迷惑メールに入りにくさ)の管理や配信状況の画面を売りにしているものが一般的です。ここでは特定の製品名の紹介は控えますが、比較するときは次の点を見ます。
- 日本語での問い合わせ・サポートがあるか
- 配信状況(届いた・届かなかった)を確認できる画面があるか
- 料金が「送信数ごと」か「月額固定」か
SMS送信の移行先候補
公式ガイドでは、ACSのSMSについて、Microsoft自身の代替は現時点で用意されておらず、パートナーの利用が主な移行先とされています。Dynamics 365のコンタクトセンターを使っている場合は、Microsoftが代替サービスを終了日までに用意する方針も示されています。
候補1:Microsoft Marketplace上のパートナー(Infobip、Telesign など)
- 向いている場合:Azure周辺で契約や請求をまとめたい
- 特徴:システムからSMSを送るAPIを持つ。送信元の種類(短い番号、英数字の名前、通常の番号など)は事業者ごとに異なる
- 注意点:日本で使える送信元の種類や、携帯キャリアへの登録手続きは事業者によって違うため、個別に確認が必要
候補2:AWS End User Messaging SMS
AWSのドキュメントによると、ワンタイムパスワード(OTP)、配送状況の通知、予約のリマインドといった「システムからお客様への1通ずつの送信」を想定したSMS・音声のサービスです。
📰 出典:AWS「What is AWS End User Messaging SMS?」
- 向いている場合:すでにAWSを使っているシステム、OTPなどの認証用SMS
- 特徴:AWSのほかのサービスと連携しやすい。API経由で個別の受信者に送れる
- 注意点:対応するリージョンや国、送信元番号の取得条件を事前に確認する必要がある
候補3:Dynamics 365のコンタクトセンター
Dynamics 365 Contact Centerを使っている企業向けの選択肢です。ガイドによれば、コンタクトセンター内の会話・送信のための機能として、Microsoftが代替を用意するとされています。標準のSMS送信の単体移行先としては、条件が限られます。
注意:SMSの電話番号は移行に手間がかかる
ACSで取得した電話番号を他社へ移す(ポートする)場合は、移行先のキャリアに連絡して、委任状(LOA)の提出などが必要になることがあります。ガイドでは、番号を別の事業者に移すには、SMSの仲介事業者による再確認が必要になり、ダウンタイムが生じる可能性があるとも説明されています。電話番号を使っている場合は、早めに移行計画に入れておきましょう。
移行先の選び方:発注者が最初に決める4つのこと
| 確認すること | 理由 | 選び方の目安 |
|---|---|---|
| 誰宛てに送っているか | 社内宛てならMicrosoft 365で済む場合がある | 社外・お客様宛てなら、専用の配信サービスが基本 |
| 月の送信量とピーク | 送信量で料金・制限が変わる | 少量ならExchange Online、多いなら配信サービス |
| すでに使っているクラウド | 契約・請求・運用の手間が変わる | AWS中心ならSES、Azure中心ならMarketplaceのパートナー |
| 電話番号(SMS)の有無 | 番号の移転に手間と停止リスクがある | 番号がある場合は、移行先を早めに決める |
比較表:候補の特徴を一覧で見る
| 候補 | 種別 | 社外宛て | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| Microsoft 365 HVE | メール | 不可(執筆時点) | 社内向け業務メール | 社外宛て不可 |
| Exchange Online | メール | 可(制限あり) | 少量の業務メール | 大量配信向けではない |
| Amazon SES | メール | 可 | 取引メール・通知 | AWS管理とドメイン認証が必要 |
| Infobip/Telesign | メール・SMS | 可 | 複数チャネルをまとめる | 国内対応・料金は個別確認 |
| AWS End User Messaging SMS | SMS | 可 | OTP・通知 | 対応国・番号条件の確認 |
| Dynamics 365 | SMSなど | 契約内 | コンタクトセンター | 利用者が限られる |
※ 製品の位置づけや条件は2026年10月時点の公式情報にもとづきます。実際の採用は、開発会社と、送信量・宛先・予算を踏まえて決めてください。
よくある失敗パターン
- 料金だけで選ぶ:到達率や、届かなかったときの確認のしやすさを見落とす
- メールだけ移して、SMSを忘れる:SMS側にだけ番号の移転作業が残る
- ドメイン認証を後回しにする:切り替え後に、迷惑メールとして扱われやすくなる
- テストなしで一斉に切り替える:本番で届かない事態に気づくのが遅れる
発注者向けチェックリスト
- ☐ ACSを使っている機能を、メール・SMSに分けて一覧にした
- ☐ 送信の宛先(社内/社外)と、月の送信量・ピーク時の量を確認した
- ☐ 社外宛てのメールがある場合、Microsoft 365だけでは足りないことを理解した
- ☐ SMSで使っている電話番号・送信元の種類を確認した
- ☐ 候補を2〜3つに絞り、開発会社に概算の費用と作業量を依頼した
- ☐ 送信元ドメインの認証設定と、切り替え時のテスト計画を確認した
- ☐ 移行の時期(2028年9月より前)と予算を決めた
開発会社への質問例
- 「当社の送信は、社内宛てと社外宛てのどちらが何割くらいですか?それを踏まえて、移行先の候補を2〜3つ提案してもらえますか?」
- 「候補ごとに、費用(初期と月額)と改修の作業量の目安を教えてください」
- 「送信元ドメインの認証設定は、切り替え前にどう進めますか?迷惑メール扱いにならないための確認方法は?」
- 「SMSで電話番号を使っている場合、移行先への番号の移転は可能ですか?停止する時間は発生しますか?」
- 「切り替え後にメールやSMSが届かなかったとき、原因を確認できる画面やログはありますか?」
まとめ:移行先は「宛先」と「すでに使っているクラウド」で絞る
- メールは、社内宛てならMicrosoft 365のHVE、社外宛ては配信サービス(Amazon SESなど)が中心になる
- SMSは、Microsoftの代替が限られるため、パートナーやAWSなどの外部サービスが主な選択肢になる
- 候補は「宛先」「送信量」「すでに使っているクラウド」「電話番号の有無」で絞る
- 期限(2028年9月30日)までには時間がある。まず現状の一覧を作り、2〜3案で見積もりを取りましょう
システムが何に支えられているかを把握しておくことは、今回に限らず、次のサービス終了のときにも役立ちます。
ACSからの移行やメール・SMS送信の仕組みの確認は、株式会社THIRD HEROへお気軽にご相談ください
「自社のシステムがAzure Communication Servicesを使っているか分からない」「移行先をどう選べばいいか分からない」「費用や作業量の見当をつけたい」。そんなときは、株式会社THIRD HEROへお気軽にご相談ください。
- メール・SMS送信の利用状況の確認と、宛先・送信量の整理
- 移行先候補の比較と、概算の費用・作業量のご相談
- 送信元ドメインの認証設定や切り替えテストを含む、移行作業の進め方
お問い合わせの時点で、システムの資料や詳しい情報が揃っていなくても問題ありません。分かる範囲でお聞かせいただければ、現状の整理からご一緒します。
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