結論から言うと、断られた=すぐにシステムが使えなくなる、ということではありません。まずは「今の技術のまま」「引き継ぎ資料の状態はどうか」「本当に緊急か」を落ち着いて確認すれば、慌てて全部作り直す前にできることがいくつもあります。
「うちのシステム、マイナーな技術で作られていて、他の開発会社に保守を頼めないと言われた」
この記事では、なぜ「マイナーな技術だから保守できない」と言われるのか、その背景と、今すぐシステムを止めずに進められる具体的な対処法を、発注者向けのチェックリストと開発会社への質問例つきで解説します。
なぜ「マイナーな技術だから保守できない」と言われるのか
まず知っておきたいのは、これは特定の会社が意地悪をしているわけでも、あなたの会社だけの特別な問題でもないということです。よくある3つの事情を押さえておきましょう。
理由1:開発会社ごとに「得意な技術」が違う
開発会社は、社内のエンジニアが習得している言語・フレームワークを中心にチームを組んでいます。今のシステムで使われている技術を扱える人が社内にいなければ、たとえ技術的には対応可能でも「安全に保守できる自信がない」として断られることがあります。これは車の修理を、その車種の部品や構造に詳しくない工場に頼みにくいのと似た事情です。
理由2:使う人が少ない技術ほど、対応できる技術者が限られる
ある言語やフレームワークを使うエンジニアが少なければ、それだけ対応できる開発会社・フリーランスの数も少なくなります。IPAの調査でも、デジタル化を進める人材の不足は年々深刻になっていると報告されており、特定の技術に詳しい人材の確保はどの会社にとっても簡単ではない状況がうかがえます。
📰 出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX動向2024-深刻化するDXを推進する人材不足と課題」
理由3:引き継ぎ資料が整っていないと、さらにハードルが上がる
設計書や仕様書がなく、ソースコードだけが残っている状態だと、開発会社は「どこにどんな処理があるか」を1から読み解く必要があります。これは技術がメジャーかマイナーかにかかわらず、保守を断られる・見積もりが跳ね上がる大きな原因です。
経済産業省のDXレポートでも、過剰なカスタマイズや属人化によってシステムの中身がブラックボックス化(=中身を把握している人がいなくなり、外から見えなくなること)することが、企業のIT活用における大きなリスクとして指摘されています。
📰 出典:経済産業省「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月7日公表)
つまり「マイナーな技術」そのものより、「その技術に詳しい人が少ないこと」と「中身が分かる資料が残っていないこと」が重なると、保守してくれる会社を見つけにくくなる、というのが実際の構図です。
落ち着いて確認したい3つのこと
断られてすぐに「システム全体を作り直さなければ」と焦る必要はありません。まずは次の3点を確認しましょう。
- 今のシステムは、今も問題なく動いているか:エラーが出ている、遅い、といった実害が今あるのか、それとも「保守してくれる会社を探しているだけ」の段階なのかを整理します
- 契約とソースコードの所在:今の開発会社(または過去の開発会社)との契約で、ソースコードや設計書を受け取れることになっているか、実際に手元にあるかを確認します
- どのくらい急いでいるか:使っているOS・ミドルウェアのサポート終了時期、セキュリティ上の懸念など、期限が決まっている要素があるかを確認します
この3つが分かるだけで、「今すぐ動くべきこと」と「時間をかけて検討すべきこと」を分けて考えられるようになります。
具体的な対処法
1. まず現状を棚卸しする
- 使っている言語・フレームワーク・バージョン
- ソースコード一式が手元にあるか、どこに保管されているか
- 設計書・仕様書・運用マニュアルの有無
- サーバーやドメインの契約者・管理者
これだけでも一覧にしておくと、次に相談する開発会社への説明がぐっと楽になります。
2. 1社の返事だけで結論を出さず、複数社に聞いてみる
「保守できない」と言われたのが1社だけであれば、他の開発会社にも同じ内容で相談してみましょう。会社によって得意分野・体制は異なるため、別の会社では対応できる場合があります。また、複数社に聞くことで「本当に技術的に難しいのか」「単にその会社の体制の問題なのか」の判断材料にもなります。
3. ソースコードの「預け先」を確認・整備する
開発会社が倒産したり連絡が取れなくなったりした場合に備えて、ソースコードや関連資料を信頼できる第三者機関に預けておく「ソフトウェア・エスクロウ」という仕組みがあります。すでに契約に含まれていないか確認し、なければ今後の契約で検討する価値があります。
📰 出典:一般財団法人ソフトウェア情報センター「ソフトウェア・エスクロウ」
4. 「全部作り直す」ではなく「段階的な移行」を検討する
保守できる会社が見つかりにくいからといって、システム全体をいきなり作り直す必要はありません。まずは影響の大きい一部の機能だけを新しい技術に置き換える、既存のシステムはそのまま動かしつつ周辺だけ新しく作る、といった段階的な進め方も一般的です。
優先順位のつけ方としては、次のような視点が参考になります。
| 視点 | 確認すること |
|---|---|
| 使用頻度 | 日常的に使う機能か、年に数回しか使わない機能か |
| 影響範囲 | 止まると業務が止まる機能か、代替手段があるか |
| 変更の多さ | 法改正や業務変更でよく手を入れる機能か |
| データの重要性 | 顧客情報など、慎重な移行が必要なデータを扱うか |
使用頻度が高く、かつ今後もよく手を入れる機能から優先的に見直すと、限られた予算でも効果を実感しやすくなります。どこまで手をつけるかは、今の困りごとの深刻さと予算次第で開発会社と相談していきましょう。
5. 次にシステムを発注するときの基準にする
今回の経験を踏まえて、次に開発を依頼するときは「その技術を扱える開発会社が複数あるか」を選定の基準のひとつに加えることをおすすめします。最新の技術や独自性の高い技術には利点もありますが、発注者側からすると「後で他社に頼みやすいかどうか」も重要な判断材料です。
気をつけたいこと
- マイナーな技術が使われていること自体は、必ずしも「悪い判断」だったわけではありません。開発当時はその技術が最適だった、担当者のスキルセットに合っていた、といった事情があった可能性もあります。原因を突き止めて誰かを責めることよりも、「これからどうするか」に意識を向けましょう
- 逆に「有名な技術だから安心」とも限りません。同じ技術でも古いバージョンのまま更新されていなければ、結局は対応できる会社が限られてきます
- ソースコードの著作権が誰にあるかと、ソースコードを受け取れるかどうかは別の問題です。契約書に「納品物にソースコード・設計書を含む」と明記されていなければ、著作権の帰属にかかわらず、実際には受け取れないこともあります。心配な場合は、今の契約内容を確認してみましょう
- 費用や契約に関わる個別の判断(著作権の扱い、契約解除の可否など)に不安がある場合は、この記事の内容だけで判断せず、弁護士や公的な相談窓口に確認することをおすすめします
📰 出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書」
発注者がやることチェックリスト
- ☐ 使っている言語・フレームワーク・バージョンを一覧にした
- ☐ ソースコード一式が手元にあるか、保管場所を確認した
- ☐ 設計書・仕様書・運用マニュアルの有無を確認した
- ☐ 今の契約でソースコード・設計書の納品義務があるかを確認した
- ☐ 今すぐ対応が必要な実害(エラー・サポート終了時期など)があるか整理した
- ☐ 複数の開発会社に同じ条件で相談し、返事を比べた
- ☐ ソフトウェア・エスクローなど、開発会社と連絡が取れなくなった場合の備えを検討した
開発会社への質問例
- 「今のソースコード・設計書を拝見したうえで、どの部分なら保守を引き受けられますか?」
- 「保守が難しいとすれば、それは技術面の理由ですか、それとも資料が足りないことが理由ですか?」
- 「全部を作り直さず、一部だけを新しい技術に置き換える進め方は可能ですか?」
- 「御社が保守を担当する場合、ソースコード・設計書は契約上どのような形で納品されますか?」
- 「今後また同じような状況にならないために、発注者として気をつけておくべきことはありますか?」
まとめ:断られてもすぐに手詰まりにはなりません
「マイナーな技術で作られていて保守を断られた」と言われると不安になりますが、多くの場合それは「その会社では対応が難しい」という話であって、「システムがすぐに使えなくなる」という話ではありません。
まずは現状を棚卸しし、複数の開発会社に相談し、必要であればソースコードの預け先を整えながら、段階的な移行を検討する。この順番で進めれば、慌てて大きな費用をかけずに、落ち着いて次の一手を選べます。
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コメント
コメント一覧 (1件)
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