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    業務手順をAIに覚えさせるには?Agent Skill(スキル)の作り方入門と社内で使うときの注意点

    「見積書のチェック方法」「議事録のまとめ方」など、毎回AIに同じ説明を貼り付けていませんか。こうした業務手順は、AIの「Agent Skill(エージェントスキル)」という仕組みにしておくと、必要なときにAIが自分で読み込んで使ってくれるようになります。

    「業務手順をスキルにしてAIに覚えさせたい。でもエンジニアではないので、何をどう作ればいいのか分からない…」

    先に結論をお伝えします。文章だけのスキルなら、プログラミングができなくても作れます。必要なのは、フォルダを1つ作り、その中に「SKILL.md」という説明書ファイルを置くことだけです。一方で、プログラム(スクリプト)を含むスキルや、社内システムとつなぐ仕組みは、エンジニアや開発会社に相談したほうが安全です。

    この記事では、AI開発ツールの機能拡張である「スキル」について、仕組み・置き場所・最初の1本の作り方・チームで使うときのルールを、発注者・管理職の目線で解説します。機能や対応状況は執筆時点(2026年9月)の公式ドキュメントに基づいています。

    目次

    業務手順をAIに覚えさせる「Agent Skill(スキル)」とは

    スキルとは、ひと言でいえば「AI向けの業務マニュアル」をフォルダにまとめたものです。AIは普段は説明文だけを見ておき、関係のある依頼が来たときに中身を読み込んで、その手順どおりに作業します。

    📰 出典:Claude Code Docs「Extend Claude with skills」

    Anthropic社のAIコーディングツール「Claude Code」の公式ドキュメントでは、スキルは「SKILL.md ファイルに指示を書くと、Claudeがそれを道具箱に加える」ものと説明されています。そして、同じ指示やチェックリスト、複数ステップの手順を何度もチャットに貼り付けているときに使うとよい、とされています。まさに「業務手順を覚えさせたい」という悩みに向いた機能です。

    Claude以外のAIツールでも使える共通の形式

    スキルは2025年10月にAnthropic社が発表した機能で、同年12月にはほかのAIでも使える「オープン標準(=誰でも使える共通の決まりごと)」として公開されました。

    📰 出典:Anthropic「Introducing Agent Skills」

    実際に、GitHub社のAIツール「GitHub Copilot」もスキルに対応しています。GitHub Docsでは、執筆時点(2026年9月)でCopilotのクラウドエージェント、コードレビュー、Copilot CLI、VS Code・JetBrainsのエージェントモードなどでスキルが使えるとされ、Claude Code用のフォルダ(.claude/skills)に置いたスキルも読み込めると書かれています。

    📰 出典:GitHub Docs「About agent skills」

    一度書いた業務手順を、特定のツールに縛られずに使い回しやすいのは、発注者にとっても安心材料です。ただし、ツールごとに対応している項目や置き場所には違いがあるため、使うツールの公式ドキュメントで確認してください。

    スキルの中身は「フォルダ1つ」と「SKILL.md」

    スキルの形式を定めた仕様では、スキルは少なくとも SKILL.md というファイルを1つ含むフォルダだとされています。

    📰 出典:Agent Skills「Specification」

    SKILL.md は大きく2つの部分でできています。

    • 冒頭の設定部分(フロントマター):スキルの名前(name)と説明文(description)を書く
    • 本文:AIに守ってほしい手順・ルール・出力の例を、普通の文章や箇条書きで書く

    必要に応じて、フォルダの中に参考資料(詳しいルール表やテンプレート)やスクリプト(=自動で動く小さなプログラム)を追加することもできます。まずは SKILL.md だけで十分です。

    AIがスキルを使うかどうかは「説明文」で決まる

    ここが一番大事なポイントです。AIは起動時にすべてのスキルの「名前と説明文」だけを読んでおき、依頼内容と説明文が合ったときに初めて本文を読み込みます。

    📰 出典:Claude Docs「Agent Skills overview」

    公式ドキュメントでは、説明文には「そのスキルが何をするか」と「いつ使うか」の両方を書く必要があるとされています。「見積書のスキル」のような曖昧な説明文では、AIが使うべき場面を判断できません。逆に言えば、説明文さえ具体的なら、スキルがたくさんあってもAIは必要なものだけを選んでくれます。

    スキルを置く場所は「誰が使うか」で決める

    同じ SKILL.md でも、置く場所によって使える範囲が変わります。Claude Code の公式ドキュメントに基づく主な置き場所は次のとおりです。

    置き場所使える範囲向いている用途
    個人用(自分のPCのホームフォルダ内 .claude/skills)自分が開くすべてのプロジェクト自分だけの作業のクセ・下書きの試作
    プロジェクト用(リポジトリ内の .claude/skills)そのリポジトリで作業する人チームで共通の手順(リポジトリ=ソースコードや文書の保管場所)
    プラグイン(スキルなどをまとめた配布パッケージ)プラグインを有効にした人複数チーム・複数プロジェクトへの配布
    組織の管理設定(管理者が配布する設定フォルダ)組織内の全ユーザー全社ルールとして徹底したい手順

    📰 出典:Claude Code Docs「Extend Claude with skills」

    GitHub Copilot では、プロジェクト用に .github/skills・.claude/skills・.agents/skills、個人用に ~/.copilot/skills などが案内されています(執筆時点・2026年9月)。また、ブラウザ版の Claude(claude.ai)では、有料プランでコード実行を有効にしている場合に、スキルをzipファイルにして設定画面からアップロードする方法もあります。claude.ai での共有範囲はツールごと・プランごとに異なるため、導入前に公式ヘルプで確認しましょう。

    初めてのスキルを作る5ステップ(例:見積書チェック手順)

    ここからは、説明のための架空の例として「開発会社から届いた見積書を社内ルールでチェックする」スキルを作ってみます。自社の業務に置き換えて読んでください。

    ステップ1:AIに毎回伝えている手順を書き出す

    最初に、普段AIに貼り付けている指示や、新人に口頭で教えている手順を箇条書きにします。公式のベストプラクティスでも、まずはスキルなしでAIと作業し、その中で何度も伝えている情報を見つけることがすすめられています。

    📰 出典:Claude Docs「Skill authoring best practices」

    • 見積書の項目は「作業名・工数・単価・金額」がそろっているか
    • 「一式」表記の項目は内訳を確認する
    • 保守費・サーバー費など、初期費用以外の費用が書かれているか
    • 前提条件・対象外の作業が明記されているか

    ステップ2:フォルダと SKILL.md を作る

    「mitsumori-check」という名前のフォルダを作り、中に SKILL.md を置きます。名前は英小文字・数字・ハイフンで書くのが仕様上のルールです(最大64文字)。SKILL.md の中身の例は次のとおりです。

    • 1行目:—(設定部分の始まり)
    • name: mitsumori-check
    • description: 開発会社から届いたシステム開発の見積書を社内ルールに沿ってチェックし、確認すべき点を一覧にする。見積書・見積もりの確認やレビューを頼まれたときに使う。
    • —(設定部分の終わり)
    • 本文(ここから下が手順):
    • 「見積書チェックの手順」という見出し
    • 1. 作業名・工数・単価・金額の4項目がそろっているかを確認する
    • 2. 「一式」と書かれた項目を抜き出し、内訳を確認する質問を作る
    • 3. 初期費用以外の費用(保守費・サーバー費・ライセンス費)の記載有無を確認する
    • 4. 前提条件・対象外作業の記載がなければ指摘する
    • 5. 結果は「問題なし/要確認/記載なし」の3区分の表で出力する
    • 注意:金額の妥当性は判断せず、確認すべき点の洗い出しにとどめる

    最後の「注意」のように、AIにやらせないことも書いておくと、判断を越えた回答を防ぎやすくなります。なお、公式のベストプラクティスによると、AIにスキルの形式で下書きさせることもできるため、ステップ1のメモを渡して整えてもらうのも一つの方法です。

    ステップ3:説明文(description)を具体的にする

    説明文には「何をするか」と「いつ使うか」を必ず入れます。社内でよく使う言い方(「見積もり」「見積書」「相見積もり」など)を含めておくと、依頼の言い回しが違っても見つけてもらいやすくなります。

    ステップ4:実際に呼び出して試す

    Claude Code では、依頼内容が説明文と合えばAIが自動でスキルを使います。また「/mitsumori-check」のように、スラッシュに続けてスキル名を入力すれば直接呼び出すこともできます。

    試すときは、次の2点を確認してください。

    • 「この見積書を確認して」など自然な言い方で頼んだときに、スキルが使われるか
    • 出力が手順どおりか(表の形式・3区分・やらせないことを守っているか)

    ステップ5:うまくいかなかった点を直して育てる

    公式のベストプラクティスでは、実際の業務でスキルを使い、AIがつまずいた点を観察して直すことを繰り返すよう案内されています。「一式の項目を見落とした」なら手順の順番や書き方を強める、「使われなかった」なら説明文を見直す、という具合です。SKILL.md は500行以内に収め、長くなる資料は別ファイルに分けることもすすめられています。

    社内でスキルを使うときに決めておくこと

    個人で試すだけなら気軽に始められますが、チームで使うなら管理職・発注者として次の点を決めておきましょう。

    • 管理する人:誰がスキルを作り、誰が変更を承認するか
    • 置き場所:個人用で試し、固まったらプロジェクト用やプラグインで共有する、などの段階
    • 使うツールとプラン:会社として契約しているプランか、入力データが学習に使われない設定か
    • 更新のルール:業務ルールが変わったときに誰がスキルを直すか

    スキルは「書いた内容どおりにAIが動く」仕組みなので、古い手順が残っていると古いルールで作業されてしまいます。業務マニュアルと同じく、持ち主と更新日を決めておくことが大切です。

    注意点と限界:秘密情報は書かない、他人のスキルは中身を確認する

    パスワードや顧客情報をスキルに書かない

    スキルはファイルとして保存され、プロジェクト用に置けばチーム全員が読めます。パスワード・APIキー(=システムに接続するための鍵)・顧客の個人情報などは書かないでください。手順の中で必要な場合も「担当者に確認する」とだけ書き、鍵そのものは載せないのが基本です。

    配布されているスキルは「ソフトのインストール」と同じ感覚で

    インターネット上には便利なスキルが公開されていますが、Anthropic社の公式ドキュメントは、スキルは自分で作ったものか信頼できる提供元のものだけを使うよう注意を促しています。スキルには指示やスクリプトが含まれるため、悪意のあるスキルはAIに想定外の操作をさせ、情報の持ち出しなどにつながるおそれがあるからです。

    📰 出典:Claude Docs「Agent Skills overview」(Security considerations)

    同ドキュメントでは、SKILL.md だけでなくスクリプトや画像も含めてすべてのファイルを確認すること、外部のURLからデータを取得するスキルは特に注意することが挙げられています。また Claude Code のドキュメントでは、リポジトリに入っているスキルが自分に広い操作権限を与える設定(allowed-tools)を含む場合があるため、そのリポジトリで作業する前に確認するよう書かれています。

    AIの出力は人が確認する前提で

    スキルを作っても、AIが毎回完璧に手順を守るとは限りません。見積書チェックの例でも、最終的な判断や社外への回答は必ず人が確認してください。

    エンジニア・開発会社に頼んだほうがいいケース

    次のような場合は、社内のエンジニアや開発会社に相談するのがおすすめです。

    • スクリプトを含むスキル:計算・ファイル変換など、プログラムを動かす処理を入れたい
    • 社内システムとつなぎたい:販売管理や顧客管理のデータをAIに読ませたい。この場合はスキルではなく「MCP(Model Context Protocol=AIと外部のツール・データをつなぐ共通規格)」の出番になることが多い
    • 全社展開したい:プラグイン化や管理者設定での配布、権限の設計が必要

    📰 出典:Claude Code Docs「Connect Claude Code to tools via MCP」

    Claude Code のドキュメントでは、MCPでつなぐ外部の仕組み(MCPサーバー)について、接続する前にそれぞれ信頼できるか確認するよう注意書きがあります。接続先・権限・データの扱いを決める必要があるため、ここは開発会社と一緒に設計する領域だと考えてください。

    「文章だけのスキルは現場の方が書くのが一番です。業務を知っているのは現場なので。スクリプトやシステム連携の部分は、権限や安全面も含めてこちらで設計します」

    発注者がやることチェックリスト

    • ☐ AIに毎回貼り付けている指示・手順を1つ選んで書き出した
    • ☐ スキルの説明文に「何をするか」と「いつ使うか」を書いた
    • ☐ スキルに「AIにやらせないこと」を書いた
    • ☐ パスワード・APIキー・個人情報がスキルに含まれていないことを確認した
    • ☐ 自然な言い方で頼んだときにスキルが使われるか試した
    • ☐ スキルの管理者と更新ルールを決めた
    • ☐ 外部から入手したスキルは、すべてのファイルの中身を確認してから使うルールにした
    • ☐ 使うAIツールのプランとデータの扱い(学習に使われるか)を確認した

    開発会社への質問例

    • 「社内の業務手順をスキルにしたいのですが、文章だけで作れる範囲と、スクリプトやシステム連携が必要な範囲を分けてもらえますか?」
    • 「御社の開発で使っているAIツールに、当社用のスキルやカスタム指示を置く場合、どこに置いて誰が管理しますか?」
    • 「スキルやMCPで社内データにつなぐ場合、AIに許可する操作と権限をどう制限しますか?」
    • 「外部で公開されているスキルやMCPサーバーを使う場合、導入前にどんな確認をしていますか?」
    • 「スキルを使うと開発会社が変わっても手順を引き継げますか?当社側で持っておくべきファイルは何ですか?」

    まとめ:まずは文章だけのスキルを1本作ってみる

    業務手順をAIに覚えさせる「スキル」は、フォルダと SKILL.md 1つから始められる仕組みです。ポイントを振り返ります。

    • スキルは「AI向けの業務マニュアル」。GitHub Copilot など、複数のAIツールで使える共通の形式になっている
    • AIが使うかどうかは説明文で決まる。「何をするか」「いつ使うか」を具体的に書く
    • 置き場所で共有範囲が変わる。個人用で試してからチームに広げる
    • 秘密情報は書かない。外部のスキルは中身を確認してから使う
    • スクリプトやシステム連携が必要になったら、エンジニア・開発会社に相談する

    最初から完璧を目指す必要はありません。まずは毎回AIに説明している手順を1つ選び、文章だけのスキルにして試すところから始めてみてください。

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      この記事を書いた人

      株式会社THIRD HERO代表取締役 朝野貴朗
      Webシステム開発を中心に、toC向けサービスサイトの運営、ツール開発などを行ってまいりました。

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