「飲食料品の消費税が下がる」というニュースを見て、自社のECサイトや販売管理システム、レジは何か直す必要があるのか、いつまでに開発会社へ頼めばいいのか、不安になっている方は多いのではないでしょうか。
「消費税が下がるらしいが、うちのECサイトや販売管理システムも直さないといけないのか、いつまでに頼めばいいのか分からない」
先に結論をお伝えします。飲食料品を扱っている会社は、システムの改修が必要になる可能性が高いものの、法案が成立する前の今は「作業を発注する時期」ではなく「影響範囲を洗い出して見積もりを取る時期」です。飲食料品を扱わない会社でも、請求書や帳票の表示に影響することがあるため、一度は確認しておくと安心です。
この記事では、2026年10月24日時点で公表されている内容を整理したうえで、発注者が今のうちにやっておきたい6つの確認と、開発会社への質問例を解説します。なお、制度の内容は国会での審議によって変わる可能性があります。
2026年10月時点で分かっていること(成立前の案です)
まず、現時点で報じられている内容を整理します。次の表は、報道と政府の公表資料をもとにした2026年10月24日時点の整理です。
| 項目 | 現時点の案 |
|---|---|
| 内容 | 飲食料品の消費税率(国・地方あわせて)を8%から1%へ引き下げる |
| 期間 | 2027年4月から2年間(臨時的な措置) |
| 対象 | 現在の軽減税率(8%)の対象となっている飲食料品 |
| 対象外 | 外食(店内飲食)・ケータリング、酒類は10%のまま。週2回以上発行される新聞の定期購読は8%のまま |
| 国会の状況 | 2026年10月9日に法案が閣議決定され、国会に提出された |
📰 出典:共同通信(Yahoo!ニュース)「飲食料品の消費税1%を閣議決定」
報道によると、政府は2027年4月からの2年間、飲食料品の税率を1%にする法案を閣議決定し、早期の成立を目指しています。野党からは財源や給付の範囲について指摘も出ており、審議の行方次第で内容が変わる可能性は残っています。
最新の状況は、政府や国会の公式ページで確認できます。
📰 出典:衆議院「消費税率の臨時的な引下げ等に関する法律案」の経過
ここで大事なのは、「確定したら動く」では間に合わない可能性があることです。開始予定の2027年4月までは約半年しかなく、同じ時期に改修依頼が集中し、開発会社の枠が取りにくくなることもあります。
なぜシステムの改修が必要になるのか
「税率の数字を書き換えるだけでは?」と思われるかもしれません。ところが、実際には次のような理由で改修が必要になります。
税率が「3種類」同時に存在するようになる
2027年4月以降は、飲食料品の1%、外食や酒類などの10%、新聞などの8%が同じ期間に並びます。軽減税率が始まった2019年10月のときと同じように、1つの注文の中に複数の税率の商品が混ざるケースへの対応が必要です。
税率が適用される日付で切り替える必要がある
「いつ売ったか」「いつ納品したか」によって適用される税率が変わるため、注文日・出荷日・請求日のどれを基準に税率を決めるのかをシステムで決めておく必要があります。
2年後に元に戻る前提で作る必要がある
今回は期間限定の措置とされており、2029年3月末には税率が戻る予定です。税率をプログラムに直接書き込んで直してしまうと、2年後にもう一度同じ改修費がかかります。期間を指定できる形で作っておくことが、将来の費用を抑えるポイントです。
「税率を『設定値』として持っておけば、期限が来たときに画面から切り替えられることもあります。最初の作りかたで、2年後の手間が大きく変わります」
改修が必要になりやすいシステムの例
自社のどこに影響が出そうか、まず次の表で当たりをつけてください。
| システム | 影響の例 |
|---|---|
| ECサイト・カート | 商品ごとの税率、税込価格の表示、合計金額の計算 |
| 販売管理・受発注システム | 見積書・納品書・請求書の税率別の集計 |
| レジ・POS | 税率区分の追加、レシートの表示 |
| 会計ソフトとの連携 | 仕訳の税区分、連携データの形式 |
| 請求書発行・インボイス対応 | 税率ごとの対象額と消費税額の表示(適格請求書の記載事項) |
報道では、税率をゼロではなく1%にした背景として、レジや会計システムの改修に時間がかかることが挙げられています。また、1%であればゼロにするより改修の期間が短く済むとの見方も報じられています。ただし、これは一般論で、実際の期間と費用は、システムの作りによって大きく変わります。
発注者が今のうちに確認する6つのこと
1. 自社の商品に「飲食料品」がどのくらいあるか
まず、扱っている商品のうち、現在の軽減税率(8%)の対象になっているものを一覧にします。対象の考え方は国税庁の案内で確認できます。
食品と食品以外がセットになっている商品(ギフト詰め合わせなど)は判断が難しいことがあります。迷うものは、税理士や税務署などの専門家に確認してください。
2. 税率を扱っているシステムを洗い出す
ECサイト、販売管理、レジ、会計ソフト、請求書発行ツールなど、税額を計算したり表示したりしているものをすべてリストにします。見落としがちなのが、Excelで作った見積書や、数年前に外部の人が作った小さな管理ツールです。
3. 税率の切り替えをシステムがどう扱っているか聞く
2019年の軽減税率のときに改修したシステムなら、「税率のマスタ(一覧表)」がある場合もあります。その場合は、設定の追加だけで済む可能性があります。逆に、税率がプログラムに直接書かれている場合は、改修の範囲が広がります。
4. 開発会社に「概算の見積もり」と「着手できる時期」を聞く
法案成立前でも、概算の見積もりと、改修の枠が確保できる時期は聞けます。正式な発注は制度が確定してからで構いませんが、枠だけは早めに押さえておくと安心です。
5. 改修の費用を誰が負担するか、契約で確認する
保守契約の範囲に、法改正に伴う改修が含まれているかどうかは契約によって異なります。「保守費の範囲内」なのか「別途見積もり」なのかを、先に確認してください。個別の契約解釈は、弁護士などの専門家に相談するのが確実です。
6. 補助金や支援策の有無を確認する
過去の制度変更では、レジの入れ替えなどに対する補助が用意されたことがあります。今回の事業者向け支援については、本記事の執筆時点で具体的な内容を確認できていません。公式サイトや商工会議所などの案内を、定期的に確認してください。
やりがちな失敗
- 「成立してから考える」と待ってしまう:開始が2027年4月の予定のため、成立後に動くと改修枠が取れないことがあります
- 税率の数字だけ書き換えてもらう:2年後にもう一度、同じ費用がかかります
- ECサイトだけ直して、請求書や会計ソフトとの連携を忘れる:金額の食い違いにつながります
- 表示価格(税込・税抜)の見せ方を決めていない:値札やサイトの表示の考え方は、事前に社内で決めておきましょう
発注者がやることチェックリスト
- ☐ 扱っている商品のうち、飲食料品(現在の8%対象)の割合を把握した
- ☐ 税額を計算・表示しているシステムを一覧にした(EC、販売管理、レジ、会計、請求書など)
- ☐ 2019年の軽減税率対応をしたシステムと、その時の改修内容を調べた
- ☐ 開発会社に概算の見積もりと着手可能な時期を問い合わせた
- ☐ 法改正対応の費用が保守契約に含まれるか確認した
- ☐ 税理士に、自社の商品の税率区分を確認した
- ☐ 国会の審議状況と、事業者向け支援策を定期的に確認する担当者を決めた
開発会社への質問例
打ち合わせやメールで、そのまま使える質問です。
- 「食料品の税率が1%になった場合、当社のシステムのどこに影響が出ますか?改修が必要な箇所の一覧をいただけますか?」
- 「税率は設定値として管理されていますか?画面から期間を指定して切り替えることはできますか?」
- 「2029年3月末に税率が元に戻る場合も考えて、最初から期限つきで作ることはできますか?費用はどのくらい変わりますか?」
- 「2027年4月に間に合わせるには、遅くともいつまでに発注が必要ですか?」
- 「今回の改修は、現在の保守契約の範囲に含まれますか?別途お見積もりになる場合の目安を教えてください。」
まとめ:今は「発注」ではなく「洗い出しと概算見積もり」の時期
食料品の消費税引下げは、2026年10月24日時点では成立前の案です。内容が変わる可能性があるため、焦って改修を発注する必要はありません。一方で、開始予定の2027年4月まで時間は限られています。
- 自社の商品と、税額を扱うシステムを洗い出す
- 開発会社に、概算の見積もりと着手可能な時期を確認する
- 2年後に税率が戻ることを見据え、期間を指定できる作りにしてもらう
- 保守契約の範囲と、支援策の有無を確認する
まずは、税額を扱っているシステムの一覧を作るところから始めてみてください。自社の状況に合わせた整理が難しい場合は、一緒に考えることもできます。
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